異常歩行(病的歩行)

義肢装具学1 受講生限定ページ

ぶんまわし歩行(Circumduction Gait)

遊脚期に,足部が大きく円弧を描くように振り出す。
歩隔は正常。

 

外転歩行(Abduction Gait)

AbductionGait 立脚期・遊脚期ともに常に股関節外転位で歩行。
歩隔も正常歩行より大きくなる。

 

伸び上がり歩行(Vaulting Gait)

VaultingGait 立脚期に足関節を底屈する(背伸び)。

脚長差がある場合,短い方の下肢の立脚期に生じることがある。見かけの脚長差(遊脚則の膝関節屈曲制限,尖足)がある場合にも短い方の下肢の立脚期に生じることがある。

例)
膝に屈曲制限(伸展位拘縮)がある場合は,の立脚期に伸び上がりがみられる。
に足関節底屈位拘縮(尖足)がある場合は,の立脚期に伸び上がりがみられる。

動画では,立脚期に踵の挙上がみられる(立脚期の足関節底屈=伸び上がり)。

 

尖足歩行(Equinus Gait)

Equinus 立脚期に足関節底屈位(尖足位)で接地。脳卒中片麻痺の場合は,遊脚期の膝関節屈曲不足と相まって足尖クリアランスが悪いため,ぶんまわし歩行となることが多い。

尖足歩行では立脚期を通じて踵が接地することはない。

 

トレンデレンブルグ歩行(Trenderenburg Gait)

TrenderenburgGait 患側の立脚期(特に立脚中期)に遊脚側の骨盤が下制する。

が患側


が患側(1:19からの白い下着の女性)

 

 

デュシェンヌ歩行(Duchenne Gait)

DuchenneGait

患側の立脚期(特に立脚中期)に遊脚側の骨盤が挙上し,多くの場合,体幹が立脚側へ側屈する。


↑ 右が患側


↑ が患側(0:27から1:18までの青い水着の女性)

 

 

大殿筋歩行

GMGait

立脚期に体幹前屈位(股関節屈曲位)で姿勢を保持できないため,急激に腹部を前に突き出すようにして股関節を最大伸展させロックする(上の図では患側は)。

 

鶏歩(Steppage Gait)

遊脚期に足関節背屈が不十分で,足尖が上がらない(=下垂足:drop foot)。つま先を引きずったり,ぱたんぱたん(or ぺたぺた)と歩く。足尖の引きずりを避けるため,股関節を強く屈曲し,膝を高く挙上することもある。歩幅と歩隔は正常のことが多い。


↑ 両側とも。


画質が悪いですが,足の鶏歩です。

 

反張膝歩行(Back Knee Gait,Hyperextended-knee Gait)


 hyperextended-knee

立脚期に膝関節が過伸展する歩行。荷重と同時に急激に過伸展することもある。


↑ 立脚初期(踵接地)からに反張膝がみられる。


↑ 軽度ですが,右の立脚中期に急な膝過伸展がみられる。

 

はさみ脚歩行(Scissors Gait)

下肢は伸展・内転し,内反尖足で床をこすりながら,両足をハサミのように組み合わせて歩く。

はさみ脚歩行(クリックで再生)

X脚(外反膝)で,両膝をこすり合わせるような歩容もはさみ脚歩行ということがある。

 

有痛性歩行・疼痛性跛行(Antalgic Gait)

 

運動学的に定義付けるのは難しいが,とにかく『痛そうな』歩き方。

 

失調性歩行(Ataxic Gait)

 

バランス不良で,リズミカルな歩行ができない。

動画では立脚期に膝が伸展位でロックし,反張膝歩行の要素もみられる。


失調性歩行 (クリックで再生)

 

パーキンソン病様歩行(Parkinsonian Gait)

 

運動開始困難のため歩き始めの1歩が出にくい。歩幅は小さく小刻みに歩く。方向転換時,足の踏み替えが困難。視覚的な目印や,音(リズム)により,歩行のテンポが改善する。

動画内の『OFF』『ON』は抗パーキンソン薬が効いている時(ON)と効いていない時(OFF)のこと。