柏山 和之さん

一人で考え切る習慣は仕事にも役立っています

柏山 和之さん

大阪市立大学 大学院理学研究科 前期博士課程 情報生物学研究室(現在の動物生理学研究室) 
 大阪府柏原市立柏原中学校勤務

自分で考え、判断し行動できる生徒を育てたい

柏原市立柏原中学校で理科の教員をしています。教員になりたいと思ったのは、大学生の時の塾講師のアルバイトがきっかけです。それまで具体的な将来を描いてこれなかった私ですが、中学生の新しい旅立ちを見送る体験をして、初めて社会人としてはたらく自分の姿を考えることができました。研究や専門科目が増える3年次からの遅いスタートで、カリキュラム的には厳しい時期でしたが、大学院の前期博士課程修了後、中学校の教員になることができました。
現在は学級担任ではなく、学校全体の教育課程を編成する教務主任、および管理職と教師を結ぶパイプ役となる首席(主幹教諭)を兼任しています。中学生は難しい成長段階だと言われますが、大人では考えられないような素直さ・純粋さがにじみ出る貴重な時期だとも感じます。ひとりの社会人として、そんな時期の子どもたちの成長に関われることがやりがいです。変化が激しい今の社会にいずれ飛び出す子どもたちには、そういった素直さ・純粋さを大切にしながらも、自分で考え、自分で判断し行動できるようになってほしい、そう願いながら教育現場で日々格闘しています。

柏山さんインタビューシーン1

柏山さんインタビューシーン2

生きた化石、カブトエビの視物質を研究

大学では、生きた化石と言われるカブトエビを研究していました。水田などに大量発生するカブトエビは、1年の大半を卵の状態で過ごし、水田に水が張られると孵化します。孵化の3条件である水・気温・光のうち、光をどのように感知しているのか、光を受容する細胞(視物質)を分子レベルで調べる研究です。田植え前の短い注水期間を狙ってカブトエビを遠方まで採集しに行ったり、生き物が相手なので飼い始めたら平日休日が関係なくなってしまったりと、大変なこともありましたが、中身の濃い研究生活でした。学会での論文発表や、著名な研究者との対話など、貴重な体験もさせていただきました。
研究内容そのものが中学校の理科教育に直接役立つことは多くはありませんが、専門的な科学研究に携わった経験は、授業や教材研究における“深み”につながっていると感じています。教科書の行間に込められている内容、自然現象の背景やその原因など、より深く生徒に理解させ、また思考させる一助となっています。

柏山さんインタビューシーン3

研究室での3年間が教師、社会人としての基盤に

市大を選んだのは、特筆すべきこともない漠然とした志望動機からでしたが、純粋に理科に関心をもって入学してきた仲間との学びはとても刺激的で充実したものでした。日々の専門的な講義に加え、白浜での宿泊実習や野山でのフィールドワークなど、今考えると贅沢な学びの時間だったと思います。また、学科内のメンバーで学園祭に模擬店を出店したことは、運営という意味でも良い経験になりました。特に研究室での3年間は、教師として社会人としての今の自分の基盤になっている気がします。卒業後の進路はバラバラで、科学の世界から離れる学生も少なくありませんが、それだけに、関心のあることに没頭できる理学部の雰囲気や研究環境は、新大学になっても残してほしいと思います。

柏山さん学生時代

まずはいろいろな学びを積み重ねて、
充実した学生生活を

私自身は決して“生粋の理科好き”タイプではなく、入学直後は、インパクトのある強い志望動機をもつ学生がまぶしく感じていました。しかし、今ふりかえってみると、志望動機なんていうものは案外どうでもよいもののように思います。いろいろな学びや経験を積み重ねていく中で、新たな目標が見つかったり、自分の適性に気づいたりすることもあります。何が将来の自分につながるか、その時はあまりわからないかもしれませんが、効率的ではなくても無駄な学びはひとつもないと思います。
今は、個性や個々の希望が大切にされ、自由に選択できる機会が増えています。ある意味では、個の責任が大きくなり、むしろ不安に感じる場合もあると思います。私のように将来を明確に描けていない人も、あまり深く考え込まず、視野を広く持ち、まず目の前にあるものにチャレンジしてみてください。結果的に、きっと有意義で充実した学生生活になっていると思います。

柏山さん

柏原市立柏原中学校ってこんなところ

柏原市立柏原中学校は、大阪府柏原市の中心部に立地する公立中学校です。1947年に柏原町立中学校として創立、1958年柏原市の市制施行に伴い、柏原市立柏原中学校と改称されました。「知・徳・体の調和的発達をとげ、心身ともに健全な人格の完成」を教育目標として掲げながら、令和2年度からはめざす学校像として『みんなが主役 主体性を伸ばす 学校づくり』を設定し、3年計画で「今・10年後の社会をより良く生きる力」の育成のため研究を進めています。具体的には「主体性」「コミュニケーション能力」「情報活用能力」を3本柱とし、それぞれの資質・能力を向上させられるよう教育活動を行っています。

学校での柏山さん