最近の研究成果 (3)

3-1. EphA2受容体によるリガンド非依存的シグナルの解析

Rhoファミリー低分子量Gタンパク質の1つ、 RhoGのGDP/GTP交換因子(GEF)として働くEphexin4が、 EphA2受容体と結合することを見い出し、EphA2の過剰発現によるがん細胞の運動性・浸潤性の促進にEphexin4からの一連のシグナル伝達が関与していることを明らかにしま した (Hiramoto-Yamaki et al., 2010; Kawai et al., 2013; Kobayashi et al., 2014)。一方、EphA2-Ephexin4-RhoGシグナル経路が、がん細胞のアノイキス耐性にも関与していることを報告しました (Harada et al., 2011)。このようなEphA2によるEphexin4の活性化が、EphB6によって抑制されていることを見い出し、EphB6のがん抑制作用の一端を明らかにしました (Akada et al., 2014)。また、EphA2によるエフリンリガンド非依存的なシグナルが、上皮細胞の管腔構造の形成に関わっていることを 三次元培養系を用いて報告しました (Harada et al., 2015)。

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 EGFによってMEK-ERK-RSK経路が活性化されると、EphA2の897番目のセリンがリン酸化を受け、神経膠芽腫(グリオブラストーマ)の細胞増殖が促進されることを、その分子メカニズムも含めて報告しました (Hamaoka et al., 2016; Hamaoka et al., 2018; Tamura et al., 2022)。さらに、神経膠芽腫細胞を低グルコース環境下におくと、EphA2のS897のリン酸化が亢進することを見い出し、低グルコース環境下における膠芽腫細胞の生存 にEphA2が重要な役割を担っていることを明らかにしました (Teramoto and Katoh, 2019)。

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3-2. 神経膠芽腫細胞の浮遊培養条件下におけるEphA3受容体の役割

神経膠芽腫細胞において高発現が確認されているEphA3受容体に着目し、EphA3がEGF-Aktシグナル経路によってリガンド非依存的に制御され、浮遊培養条件下での神経膠芽腫細胞の凝集体形成促進に働いていることを明らかにしました (Toyama et al. 2019)。がん細胞は、浮遊条件下で培養すると細胞どうしが結合し大きな細胞の凝集体を形成することが 知られており、単体の細胞より細胞死が引き起こされる割合が少なく、さらには細胞凝集体の大きさとがん細胞の増殖及び生存との間には相関があることが報告されています。

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