男女共同参画事業

2025年2月6日

レポート 2024年度男女共同参画事業「住宅政策とジェンダー―ハウジングから家族・世帯を問い直す」

2024年11月30日14時より2024年度男女共同参画事業「住宅政策とジェンダー―ハウジングから家族・世帯を問い直す」を開催しました。 

    第一講演は村上あかねさん(桃山学院大学)の「アセットベース型福祉国家と女性―日本の住宅政策が前提としてきたもの― 」、第二講演は久保田裕之さん(日本大学)の「政策単位としての家族と住宅―居住ニーズと共同性― 」です。 

 

    介護・年金制度、子育て支援制度といった福祉や家族に関わる政策は現代日本の少子高齢社会において大きな注目を集めています。2023年にはこども家庭庁が発足し、異次元の少子化対策も行われつつありますが、少子化はとどまるところを知りません。平均世帯人員数が減少し、単独世帯は増加するという状況においてなお、家族とは、血縁のある人たちが家を所有して一緒に暮らし生計を共同して助け合うもの、福祉施策は世帯を単位として行われるもの、介護や子育てのようなケアは家族が担うもの、という家族主義の前提を多くの人々が持っているように思われます。この前提を問い直すことが今回の事業の大きな目的でした。 

 

    村上あかねさん(桃山学院大学)からは、住宅政策だけではなく住宅研究においても女性は不在であり、階級・階層論は住宅にほとんど焦点を当てて来なかったことが説明されました。そして、住宅政策の変遷や持家率の上昇、その背後にある社会的な変化、また新自由主義的な影響が住宅市場に与えた影響について、後期近代論の観点から考察されました。持家は単に物理的な住まいとしてだけでなく、個人の自己管理やリスクを取る主体としての側面も持ち、新自由主義の広がりとどのように関係しているのか、そしてそれが住宅市場や家族構造にどのような影響を与えているのかについてもお話しいただきました。最後に良質で経済的に負担可能な住宅に住むことができる社会をどう実現していくのかは今後の課題であると述べられました。 

    このような視点をもって住宅政策や家族のあり方、福祉国家と家父長制の関係について再考することは、今後の重要な議論となるでしょう。 

 1

  久保田裕之さん(日本大学)は、「住むこと」と「共に住むこと」、さらには国勢調査などの公的統計が定義する「世帯」の概念・定義について詳しく説明され、それぞれの線引きの難しさ、複雑さを明らかにされました。そして、実際には「世帯」がかなり強く「家族」に引っ張られて用いられてきたために生じる様々な問題点を指摘されました。これまでの政策単位における家族単位論の問題は、個人単位化論で議論されていたような個人が単位として扱われてこなかったことの問題ではなく、むしろ、家族集団だけが集団として扱われてきたことの問題であり、家族集団と個人以外に共同性が存在しないと考えられてきたことの問題だったのではないかと述べられました。非家族論的転回=「家族的機能の分節化と正当化」の議論では、居住政策を含めた社会政策の単位は、家族でも個人でもなく、ニーズを持った集団であり、従来の家族に期待されていた家族的諸機能を分節化し、それぞれが正当化可能かを検証し、正当化可能であれば、家族の枠組みを超えて保障するべきであると主張され、大きく首肯させられました。           

 2

 

    休憩をはさんだ後、会場とオンラインの参加者の方々から多くの質問が寄せられ、それぞれに対して丁寧にご回答いただきました。参加者の方々も家族や住宅について改めて問い直す機会となったと思います。非常に刺激的で有意義な時間を過ごすことができました。ご講演いただいた先生方、参加者の皆様、ありがとうございました。 

3

4