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2019年10月30日
2019年10月26日(土)、I-siteなんばで第23期女性学講演会第1部「女性と人権―ジェンダーの視点からの再考」が開催されました。以下、簡単に報告いたします。
コーディネーターの内藤葉子本学准教授による趣旨説明があったあと、第一講演者として思想史の観点から「女性・人権・歴史:人権を支えるものは何か」が報告されました。
報告では、「女性の権利は人権である」と訴えなくてはならない状況が1990年代から現れてきたことは何を意味するのか、「自然権」が「人権」へと変化する過程で(とくに19世紀後半から20世紀前半において)何が起きていたのか、それは現代の世界にどういう課題を残したのかという問いが投げかけられました。
18世紀に人権概念が登場する背景には、当時のヨーロッパ市民社会における「共感」という新しい感性の創出が関わっています。それは人権概念を支える基盤となったものです。しかし19世紀後半頃から20世紀前半にかけては、人間の平等を否定する言説によって人権概念が衰退していきます。実はこの時期は、科学的言説によって女性が「性的存在」「異性」として再定義されていく時期でもありました。
20世紀後半には、戦争の惨禍を経て人権という言葉は再び積極的に用いられるようになりますが、女性に対して十分に及ぶものではありませんでした。1990年代、女性への平時の性暴力および戦時性暴力が可視化・問題化されるようになります。身体や精神の自由を「譲り渡せない権利」としてきた人権概念は、女性の経験を反映したものではなかったことが反省的に捉え返されるようになりました。現代の世界においては、人権概念の限界を見極めながら、それでもなお人権を活かすためには何が必要なのかを考えていかなくてはならないと論じられました。
第二講演は伊田久美子本学名誉教授によって、「グローバリゼーションと女性の人権:フェミニズム運動の意義と課題」が論じられました。本講演でもまた、「女性に対する暴力」への国際的取り組みがようやく本格化したのは1990年代であることが指摘されました。女性の人権がこれまで注目されなかったのはなぜか、また逆に、近年注目されるようになったのはなぜかという問いが投げかけられます。
その問いに対して、女性運動が果たした役割、世界女性会議や「国連女性の10年」のような国際社会の取り組みが実現した経緯、大きく変化する現在の状況のなかで「人権」がもつ意義という視点から論じられました。とくにフェミニズム運動の大きな功績は、「保護する対象」とされてきた「女・子ども」を「女性」という「個」へと主体化したことです。それは国家の枠組みを越えてフェミニズム運動のグローバル化を可能にしました。また人権フレームのもと、女性主体は単なる政策の道具ではなく、目的そのものなのだという主張を生み出しました。この流れがあったからこそ、90年代に女性への暴力という人権侵害が政治課題としてクローズアップされていくことが可能になったのだと論じられました。
二つの報告のあと、フロアからの質疑と応答が為され、講演会は無事終了いたしました。
ご来場くださったみなさまからは、アンケートにおいても、勉強になったとのお言葉や温かい励ましのお言葉をいただきました。初めて来場してくださった方も、何度も足を運んでくださった方も、講演を真摯に聞いてくださいました。心よりお礼申し上げます。
次回は11月9日(土)ドーンセンターにて、「女性と人権」の2回目の講演会が予定されています。南野佳代京都女子大学教授と三輪敦子ヒューライツ大阪所長が登壇されます。みなさま、ぜひ足をお運びください。
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