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2018年1月17日
今期の連続講演会「教育のジェンダーポリティクス」全3回のレポートを、本学学生の三好令花さん(現代システム科学域3回生)が書いてくださいました。参加できなかった皆様にもご参照いただけるよう、ここに3回に分けて掲載させていただきます。
セクシュアリティについての検討がまだまだこれからの課題であるというご指摘も含めて、丁寧にまとめていただきました。ありがとうございました。
連続講演会第3回(12月9日開催)
『教育とジェンダーをめぐるポリティクス』(講演:山田綾さん)についての報告・感想レポート
今回の講演会の内容の梗概としては、
・教育とジェンダーをめぐるポリティクスについての序説
・家族を介した「子どもの貧困」の現状と課題
・家庭教育支援法案のどこが問題か
・新学習指導要領(2017年3月告示)とジェンダー/セクシュアリティ・家族の政治
・対抗戦略を考える
の5つに大きく分けられる。貧困率の年次推移などの分布図や家庭教育支援法案(仮称)の未定稿(2016年10月20日)、教科道徳の内容の学年段階・学校段階についての表、改正前後の教育基本法の比較表を参考資料として具体的に提示しながら上記の5つの内容について説明がなされた。最後の対抗戦略に関しては、実際に行われた結果だけを羅列するのではなく、山田綾先生自身が考える対抗戦略というものを示すような形で話しが進められていた。
家族を介した「子どもの貧困」の現状と課題の部分では、1985年~2009年までは子どもの貧困調査がなく、「家族単位制」の中で子どもの貧困が無視され続けてきたという現状が説明された。子どもの貧困には家庭の貧困や発達障害の問題が関わってくるというのも、大きな問題の一つと思われる。日本はOECD諸国のなかでも貧困率が上位で、税を徴収して再配分した後の方が貧困率の増加が目立つという逆転現象が起きていた。世界でも類を見ない悲惨な状態だった日本だが、是正されて保護者の給与が若干上昇したことにより貧困率が6人に1人から7人に1人へと減少したという点は評価できるが、依然として母子家庭の貧困率は高い数値を維持し続けていることは極めて問題であると言える。
家庭教育支援法案の問題点について指摘した内容の所では、やはり特定の「望ましい家族像」を法律で定めるのは危険だという見解に同意できる。男性中心主義的な日本の経済体制や価値観がまだまだ力を持っているこの社会において望ましい家族像とは、「父母ともに揃っており、父親が外で働いて母親は家庭の補助的役割をしている家庭」が想定されるだろう。そのような家族像は前時代的だと言えるし、グローバルな視点から見ても非常に遅れていると言わざるを得ない。
新学習指導要領に関しては、安倍首相の意向が大いに反映されたものであるということが強調されており、現在の政治の問題は社会の様々な面で影響を及ぼしてくるということがよく分かるものとなっていた。
一つ残念なところは、ジェンダーやセクシュアリティに関する問題についての言及が若干省略されてしまったことが上げられる。性的マイノリティなどに関する問題に興味があるため、そこに深く触れて山田先生自身の見解を詳しく述べて欲しかったという思いが残った。全3回のセミナーを受けて、セクシュアリティと教育の問題はまだまだ詳しく解決の糸口が例示されていないため、詳細な見解に触れるのが難しいのかと推測された。
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