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2024年2月26日
2023年11月18日、2023年度男女共同参画事業「非正規化する女性職―生存のためのフェミニズム―」をオンラインと対面で開催しました。
第一講演は、杉本和子さん(大阪公立大学客員研究員)の「ゆらぐ「女教師」像―2000年以降の日本映画の表象分析から―」でした。 『嫌われ松子の一生』(2006)、『告白』(2010)、『先生を流産させる会』(2011)、『ソロモンの偽証』(2015)、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016)の映画において、現在の日本の女性教員の労働者としての厳しい現状を予見していたかのような表象が描かれてきたと指摘されました。実際、2000年以降の日本の教育現場は採用抑制のため年齢構成がいびつとなり、労働環境は悪化しました。女性教員の増加と公立学校教員の非正規化が同時進行している現状は、教職の「女性化」ともいえます。こうした現状に抗して欧米で公立学校教員によるストライキが行われていることも紹介されました。
第二講演は、伊田久美子さん(大阪府立大学名誉教授)の「労働の「女性化」と生き残りの展望」です。 「労働」や「労働者」には男性中心のジェンダー・バイアスがかかってきました。それが長らく日本型雇用慣行や男性世帯主賃金として制度化されてきました。グローバリゼーションによる労働の規制緩和が起きたとしても、実質的にはパートやアルバイトといった女性や若者の非正規雇用化によって進められてきたといえます。イタリアを事例に、昨今、セックスワークやセクシュアリティの多様性への強い関心のもと、生存への要求として、ストライキという労働運動の戦術がとられています。フェミニズムは右傾化と排外主義への抵抗の結節点です。多様な生き方や多様な事情に寛容な関係のネットワークを構築していくことが、生き延びるために必要な戦略だといえるでしょう。
「生存のためのフェミニズム」という副題をつけましたが、おふたりの報告とも、女性労働者たちが声をあげていく状況が報告されました。ストライキに参加し支援するのは女性たちや教員だけではなく、男性をふくめ多様な背景をもつ労働者や保護者たちもいます。生き延びるためにネットワークがどのようなものとして現れてきているのか、その現状を知ることができました。伊田報告にあったように、「生き延びるために」、決定権をもつ立場が中高年男性によって占められている現状を変えていくことが必要だという指摘も重要です。フロアやオンライン側からの質問も多く届き、問題関心の深さを感じることができました。 講師のお二人、そしてご参加くださったみなさま、ありがとうございました。
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