身体化認知

身体化認知

私達が持つ知識は身体と密接に関係しています。たとえば、ハサミがどのような道具なのかについて言葉で説明することもできますが、ハサミで紙を切るときにどのように指を動かすか、そのとき紙をどのように支えるのか、切ったときにどのような感触がするのかは、実際にハサミで紙を切ってみなければ分かりません。このように身体の動きを参照して事物の意味が理解されることを、身体化認知と呼びます。私達の研究室では修了生の大西紗瑛さんが研究を進め、手を動かせないようにすると、手で操作できる道具を表す単語(カップ、うちわ、など)の記憶や意味処理が阻害され、左頭頂間溝付近の脳活動が低下することを明らかにしました。これは、手で操作できる道具の意味が、手の動きと関連して脳内に形成されていることを示唆します。このような研究成果は、言葉の意味はどのように生まれるのかという「記号着地」の問題を解明することにつながると考えられています。

Onishi

関連する研究業績(論文):

大西紗瑛, & 牧岡省吾. (2020). 手で操作できる物体の記憶に対する手の拘束の干渉効果: 手の位置と可視性に関する検討. 認知科学, 27(3), 250-261.

Onishi, S., Tobita, K., & Makioka, S. (2022). Hand constraint reduces brain activity and affects the speed of verbal responses on semantic tasks. Scientific Reports, 12(1), 13545.