ネコの再生医療研究
細胞病態学教室の研究
本研究室では、飼い猫や野生ネコ科動物に応用することを目的に、ネコの再生医療研究をしております。
具体的には下記のような目標を立てています。
1．ネコの体外受精研究をして、その知見を絶滅危惧種のネコ科動物に応用する
2．体外受精で得られた受精卵を使用して、万能細胞であるネコ胚性幹細胞（ES細胞）の作製に取り組む
3．ネコの細胞に初期化遺伝子を導入し、ネコ人工多能性幹細胞（iPS細胞）の作製を行う
ES細胞やiPS細胞などの万能細胞から、様々な細胞を作ることができるため、ネコの再生医療応用が期待されます。
研究の詳細な説明
現在、多くのネコ科動物が絶滅の危機に瀕しています。
そのため、イエネコで体外受精研究を行い、その知見を他のネコ科動物へ応用することを考えています。
当教室では、ネコの体外受精方法を研究し学術論文として発表しております。
Feline embryo development in commercially available human media supplemented with fetal bovine serum.
Alam ME, Iwata J, Fujiki K, Tsujimoto Y, Kanegi R, Kawate N, Tamada H, Inaba T, Sugiura K, Hatoya S.
J Vet Med Sci. 2019 Feb 19. doi: 10.1292/jvms.18-0335.
また、ネコにおける体外受精法の改良を目的とし、未成熟精子による顕微授精を行い、受精卵の作製に成功しており、ネコの遺伝子資源の有効活用が期待されます。
Development of feline embryos produced by Piezo-actuated intracytoplasmic sperm injection of elongated spermatids.
Tsujimoto Y, Fujiki K, Alam ME, Tsukamoto M, Azuma R, Kanegi R, Anzai M, Inaba T, Sugiura K, Hatoya S.
J Reprod Dev. 2019 Feb 18. doi: 10.1262/jrd.2018-119.
さらに、当教室では、ネコ卵巣を長期間冷蔵保存する方法を検討してきました。
また、ネコの精子をフリーズドライ保存する方法も開発しました。
この研究結果は、ネコ科動物の生物資源の保存に役だつと思われます。
※岩手大学の金子先生との共同研究の成果です。
Development of feline embryos produced using freeze-dried sperm.
Tsujimoto Y, Kaneko T, Yoshida T, Kimura K, Inaba T, Sugiura K, Hatoya S.
Theriogenology. 2020 Apr 15;147:71-76. doi: 10.1016/j.theriogenology.2020.02.021.
私達は、ネコの再生医療研究を目指して、万能細胞であるネコＥS細胞の作製に取り組んでいます。
ES細胞は、受精卵である胚盤胞期胚の内部細胞塊から作製されます。
そのため、体外受精で得られた受精卵を使用し、ネコES細胞株の培養を試みています。
ES細胞は、様々な細胞のもとになる細胞です。
今後は、
・ネコ体外受精技術を簡易化・効率化
・より未成熟な精子細胞を使用した体外受精技術の開発
・ネコES細胞を作製し、さまざまな細胞をつくることで、ネコの再生医療の実現
を目指します。
野生動物保全研究・獣医再生医療研究のため、ご御理解・ご協力をお願いいたします。
研究に協力してくださる皆様へ
現在、多くの方々のご協力のもと、ネコの再生医療研究を目指した基礎的研究を行っています。
本研究は、協力動物病院で実施される避妊手術・去勢手術の後に、廃棄される予定の卵巣および精巣を使用しております。
また、本研究について同意が得られたネコの個体由来の卵巣・精巣を使用しています。
多くの皆様のご協力感謝いたします。
