2022年度 学位記授与式学長式辞

2023年3月24日

大阪市立大学
大阪府立大学
大阪公立大学
学長 辰巳砂 昌弘

皆さん、卒業、修了おめでとうございます。
本日ここに、2022年度、大阪市立大学、大阪府立大学、大阪公立大学合同の、春季の学位記授与式式典を開催できますことを嬉しく思います。3つの大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。また、この間、皆さんがこのよき日を迎えられることを心待ちにし、皆さんをさまざまな形で支えてこられたご家族、関係者の皆さまにも、心よりお慶びを申し上げます。
この日を迎えるために、皆さんそれぞれ大変な思いで学位取得の準備をしてこられたと思います。丸3年に及ぶコロナ禍の中で、それまでとは全く異なる日常生活の中で、不断の努力を重ね、それぞれの目標に向かって研鑽を積み、学位取得という目的を達成された皆さんに、心から敬意を表します。
本日、大阪府立大学で学域を卒業して学士の学位を得られた方は1351名、大学院博士前期課程を修了して修士の学位を得られた方は710名、博士後期課程を修了して博士の学位を得られた方は42名、合計2103名となります。また大阪市立大学で学部を卒業して学士の学位を得られた方は1451名、大学院前期博士課程を修了して修士の学位を得られた方は522名、後期博士課程を修了して博士の学位を得られた方は77名、専門職学位課程を修了し法務博士の学位をえられた方は7名、合計2057名となります。さらに、大阪公立大学で大学院博士前期課程を修了して修士の学位を得られた方は3名、論文博士の学位を得られた方は9名となります。

それぞれの学位を取得され、今後様々な道に進まれることと思いますが、府大や市大で学んだ多くのことを糧に、実りある人生を送って頂きたいと願っています。皆さんは、自ら学び続けるための基本を大阪市立大学、大阪府立大学で身につけられたことと思います。今後は常に新しいことを貪欲に吸収し、新しい発見に感動できる人であり続けて頂きたい、そして、知的好奇心や向上心を持ち続け、これからも自身を磨き続けて頂きたいと願っています。昨年初め、ウクライナでの戦争が始まり、世界が大きく変化する中、国の動きも変わろうとしています。このタイミングで人生の節目を迎える皆さんは、この大きな変化に翻弄されることなく、地に足をつけて物事の本質を見極めながら行動して頂きたいと願っています。
さて昨年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合して、新大学、大阪公立大学がスタートしました。新大学では12学部・学域による「総合知」と、共に創る「共創」を掲げ、人生100年時代に相応しい、世代を問わず開かれた大学、人の集まる大学を目指しています。産官学民が集まり、人々のwell-being向上に向けた知の拠点を目指しますので、是非皆さんにも10年先、20年先、あるいは40年先に再びここで学んで頂く、あるいは皆さんの経験を他の方の学びとしてご提供頂く、いずれにしても自身を磨く場として、母校の発展形として誕生した大阪公立大学を再び活用頂ければと思っています。
これから新しい世界に羽ばたいてゆく皆さんに、この機会に3つのことをお話しさせて頂きます。1つは夢をもつこと、2つ目は素直になること、3つ目は人との出会いを大切にすることです。
まず1つ目、「夢」の話から。「夢なき者は理想なし。理想なき者は信念なし。信念なき者は計画なし。計画なき者は実行なし。実行なき者は成果なし。成果なき者は幸福なし。ゆえに幸福を求むる者は夢なかるべからず。」これは皆さんよくご存じの渋沢栄一の言葉です。「If you can dream it, you can do it;それを夢見ることができるならば、あなたはそれを実現できる」。これは、あのディズニーの創始者、ウオルト・ディズニーの言葉です。私は学長になる前、長く工学研究科で教員を務めてきましたが、20年以上前、ある学会機関誌に「夢」というエッセイを寄稿したことがあります。その中で、研究に関することとして「全固体電池という新しい電池を実現したい」ということを書きました。その頃、その電池は夢のまた夢の話でした。その後研究室の皆さんと地道に研究を重ねてきた結果、現在では全固体電池は車載用電源として実用化前夜を迎えています。研究室の学生の皆さんには、節目を迎えたときには、20年後、30年後をどう生きたいかを考えて下さいと言い続けてきました。「成功しようとするより、夢を叶えようとする方が楽しい」という言葉もあります。あのイチローは「夢をつかむことというのは一気にはできません。小さなことを積み重ねることで、いつの日か信じられないような力を出せるようになっていきます」と言っています。本日卒業・修了を迎えられた皆さんも、是非皆さんなりの夢を持ってそれに向かって頂きたいと思います。
2つ目は、素直であること。先程も申し上げたように私は長年、研究室の学生の皆さんと一緒に研究に取り組んできました。研究室内での研究進捗報告会、学会の発表練習などで学生の皆さんの発表に対して、気になる点の指摘や考え方の違いを述べる機会がよくありました。それに対して黙ってじっと聞いている学生もいれば、必ず一旦反発する学生、反応は千差万別です。でも皆さん、これからはどんな局面でも人の話をまずは一旦、素直な気持ちでよく聞いてみませんか。話の中には、非難されていると感じることもあるでしょう。しかし人の話を遮って反発すれば、その瞬間に思考は停止してしまいます。私の教員としての経験からは、素直な学生ほど見違えるように発展・成長すると感じました。自分自身の力だけでなく、多くの人の力を借りて、自分の弱点を見出し、修正し、向上していきましょう。
「料理人に会ったら料理のこと、運転手に会ったらクルマのこと、坊さんに会ったらあの世のことでも何でも、知ったかぶりせずに、素直な気持ちで聞いてみたらいい。自慢話なんかしているより、ずっと世界が広がるし、何より場が楽しくなる」これを言っていたのが、あの北野武です。また経営の神様と呼ばれたパナソニックの創業者松下幸之助は「よく人の意見を聞く、これは経営者の第一条件です。私は学問のある他人が全部、私より良く見え、どんな話でも素直に耳を傾け、自分自身に吸収しようと努めました。」と述べています。素直な心で、他人の意見を一旦受け入れることで、人は成長していけると私は信じています。
最後3つ目は、出会いを大切にすることについて。これはこの学位記授与式で毎年申し上げていることです。どんなに優れた人でも、一人では生きていくことはできません。様々な人の助けを借りてこそ人は生きていくことができる。
一期一会。これまで皆さんは、多くの人と出会い、今日まで成長してこられました。これまでの出会いはそれそのものが奇跡とも言えます。これまでの出会いに感謝しそれを大切にすることで、きっとこれからも新しい縁を繋いでいくことができます。私は40年の教員生活の中で、研究生活においても日常生活においても「縁」というものの大切さを実感し続けてきました。学生時代の出会いは人生の中でも生涯の付き合いとなるケースが多いと言われています。実際私もそうした多くの人たちに助けられてきました。ここで出会った多くの教員、職員、先輩、後輩、友人との縁を今後も大切にし、人生をより豊かなものにして頂きたいと願っています。
最後になりますが、皆さんが本日学位記を手にされたのは、お一人お一人の努力の賜であることは言うまでもありませんが、皆さんを支えて下さった周囲の方々のご支援があってのことと思います。今日の良き日にあたり、そのような方々に、是非感謝の気持ちをはっきり言葉で伝えて頂きたいと思います。
また、地球上では今も残念ながら悲惨な戦争が行われています。この良き日が迎えられたことを当たり前のこととせず、平和に対する感謝の気持ちをいつまでも持ち続けて頂きたいと願っています。
これからの皆さんのご活躍を祈念しつつ、今日から始まる、新しい人生に幸多かれと心から願って、私からのお祝いの言葉とさせて頂きます。