研究紹介
植物と環境との相互影響の解明
光環境が植物の光合成特性に及ぼす影響
遠赤色光の割合が小さい光照射下では,光合成特性が陽葉的になり,光合成能力が高くなることを明らかにしました.その原因として,光質による葉の形態的・生理的な変化が考えられました.
植物の湿度応答を利用したストレス緩和
植物を低湿度に短期間順化させることで,植物の蒸散特性を抑制側に変化させ,それによって,灌水が制限されたときのストレスを緩和できることを明らかにしました.
気流環境が植物のガス交換および成長におよぼす影響
植物個体および個体群において気流速度が光合成および蒸散速度に及ぼす影響を調べた結果,個体群構造とガス交換との複雑な相互作用が明らかになりました.
物理環境が気孔発達を介してガス交換に及ぼす影響
遠赤色光に対する赤色光の割合が大きい光照射下では,植物葉の気孔密度が高くなり,蒸散速度が大きくなることで水利用効率が低下することを明らかにしました.
植物の環境応答を介した病原菌の発育制御
遠赤色光の割合が小さい光照射下や低湿度では,植物の形態的・生理的特性の変化を介して葉面におけるうどんこ病菌の発達が抑制されることを明らかにしました.
物理環境が植物応答を介して害虫の行動に及ぼす影響
低湿度や遠赤色光の割合が小さい光で育成した植物では,タバココナジラミに寄生されにくいことが明らかとなり,その原因として葉色や毛じ密度の変化が考えられました.
植物個体間の生態的相互作用に及ぼす光環境の影響
蛍光灯のような遠赤色光の割合の小さい光照射下では,光による植物個体間の相互作用が起こりにくく,その結果として個体群における植物成長が不均一になりやすいことを明らかにしました.
植物の生育環境履歴推定のための深層学習の利用
異なる水分ストレス環境下で生育したキュウリ個体の葉による深層学習を行うことで,葉の形態的特徴から生育環境を推定し,さらにその根拠となる葉の部位を明示するモデルを構築しました.
効率的な植物生産システムの構築
ボトムヒート貯蔵による挿し木・接ぎ木苗生産の効率化
低温貯蔵中に接ぎ木接合部や挿し穂の発根部位を短期間加温することによって,挿し木後の発根や初期成長を高めることができることを明らかにしました.
光質制御フィルムによる植物の生育制御施設
遠赤色吸収フィルムによって照射光の遠赤色光の割合を低くすることで,植物の形態的・生理的特性を変化させ,それによって病原体の発育を抑制できることを明らかにしました.
人工照明を用いた花壇苗の開花制御
遠赤色光は長日植物の花成を促進します.この研究では,育苗中の光質と湿度を制御することで,ペチュニアの花成を促進しつつ形態を好適に制御する方法を検討しました
循環型社会のための環境制御システムの構築
メタン発酵・植物生産複合システムの構築
メタン発酵によって,農産廃棄物からメタンを含むバイオガスを生成してエネルギーを回収し,さらに消化液から肥料成分を回収して,植物生産に再利用するシステムを構築しています.
アクアポニックスによる効率的な資源循環
魚の排泄物が微生物処理を介して植物の養分として利用されるアクアポニックスにおいて,物質収支ならびに資源回収率を解析して生産性ならびに持続性を高める研究開発を行っています.
閉鎖生態系生命維持システムにおける物質循環技術の構築
長期有人宇宙活動のために必要な,閉鎖系内で物質を循環利用する生命維持システム(CELSS)を構築するために,微生物ならびに植物の持つ物質転換機能に注目して研究を進めています.
資源循環型の微細藻類培養における物質フローの解析
飼料や食料などに利用できる微細藻類を対象とした,資源循環型培養に取り組んでいます.炭素や窒素などの物質フローを解析して微細藻類への循環資源の移行量を評価し、持続可能な培養手法の構築に向けた開発検討を行っています.