樹林型

日本の代表的な11の森を復元展示
植物園では、日本各地の樹林を自然に近い形で造成しています。
北海道の低地の冷温帯域で見られる温帯北部型落葉樹林や、本州・四国・九州の海岸の暖温帯域で見られる海岸型照葉樹林など11の樹林型を造っているので、各地の樹林散策を擬似体験できます。特に冬季は落葉樹林と常緑樹林の違いが一番分かりやすい季節です。
本ページでは、「照葉樹林」「落葉樹林」「針葉樹林」の3つのグループに分けて説明しています。


照葉樹林

  • タブ型照葉樹林
    タブ型照葉樹林
    タブノキ、クスノキなどを主とするこの型の森林は、照葉樹林帯の海岸に近い低地や山地、排水のよい沖積地や台地の、斜面下部の適潤で土壌の深い地域に分布しています。まるくモクモクと盛り上がった球面のような樹冠が特徴で、夏に雨の多い日本の暖帯林の代表的な森林です。
    このタブ型の森林をはじめ、カシ型、シイ型の照葉樹林は、世界中で東アジア暖帯の湿潤気候下にのみ分布し、構成樹種の豊富さ、立体構造の複雑さは熱帯多雨林についでいます。わが国の文化は、この照葉樹林の分布する地域から発達したことは有名です。

  • シイ型照葉樹林
    シイ型照葉樹林
    ツブラジイ、スダジイ、アラカシなどを主とするこの型の森林は、照葉樹林帯の中で地形的に排水がよく、土壌が比較的乾燥する場所に分布し、湿潤な環境を好むカシ型の森林と棲み分けています。
    シイ型の森林は、ツブラジイ型とスダジイ型の二型に分れていますが、一般にツブラジイ型は内陸的であり、スダジイ型は海岸よりに多くみられます。
    また、シイ型の森林は、かつては近畿や中国地方の平地にも広く分布していましたが、その大部分は農耕地や人間の居住地域となり、現在では社寺林などにその面影が残されています。

  • 海岸型照葉樹林
    海岸型照葉樹林
    ウバメガシ、トベラなどを主とし、九州、四国、本州の照葉樹林帯の海岸地方に分布する常緑広葉樹林です。
    乾燥した土壌や、潮風に耐えることのできる小型のかたい葉や、厚い葉をもつ、ウバメガシ、トベラ、シャリンバイ、マサキなどの低木が多いのが特徴です。
    夏に乾燥する地中海地方のオリーブやコルクガシなどの硬葉樹林と似ていますが、多雨気候化の日本の海岸型照葉樹林とは区別されています。

  • 低地カシ型照葉樹林
    低地カシ型照葉樹林
    日本のカシ型の森林は、イチイガシやツクバネガシなどを主とする平地の低地カシ型と、ウラジロガシやシラカシなどを主とする山地の高地カシ型の森林の2つに大きく分けることができます。
    低地カシ型の森林は、照葉樹林の中ではもっとも広く分布しています。主として関西以西の湿潤な環境に分布していたが、他の低地の照葉樹林と同じように人間により切り拓かれて、二次林化・農地化・都市化し、もとの面影をとどめる森林はきわめて少なくなっています。

  • 高地カシ型照葉樹林
    高地カシ型照葉樹林
    ウラジロガシ、シラカシ、アカガシなどを主とし、照葉樹林帯の比較的土壌水分に富んだ内陸部の山地の斜面に分布し、九州の高地・近畿・中国地方の山地に多くみられます。
    照葉樹林帯の山地の中で、低い所には低地カシ型がみられ、その上部の森林が、この高地カシ型の森林となるのが普通です。また、一部はシイ型の樹林の上部においてもみられます。

落葉樹林

  • 暖帯型落葉樹林
    暖帯型落葉樹林
    クヌギ、コナラ、アベマキ、シデ類などを主とする暖帯型落葉樹林は、普通は冬の寒さのために照葉樹林が生育できない地域や、夏の暑さのために温帯落葉樹林が生育できない暖温帯の低山地に広く分布しています。日本の森林帯の特徴である中間帯の森林の1つであり、日本の里山の景観を作っています。しかし、このような里山地域の都市近郊では開発の対象となることが多く、現在ではゴルフ場や宅地などに変わり、クヌギ、コナラ型の森林が少なくなっています。本園のクヌギ・コナラ型の樹林は二次植生です。

  • 温帯南部型落葉樹林
    温帯南部型落葉樹林
    ブナ、ミズナラなどを主とする温帯南部型の落葉樹林は、ブナ帯と呼ばれる日本の温帯林を代表する森林です。ブナが優占種の位置を占めていますが、ミズナラ、ケヤキ、トチノキ、ホオノキ、オニグルミ、カツラ、カエデ類など多様な樹種から成り立っています。
    本園の温帯南部型の落葉樹林は、暖、冷両温帯の移行帯に分布するケヤキの優占する森林をモデルとしているので、温帯性のブナ林とは、やや違った景観をしています。

  • 温帯北部型落葉樹林
    温帯北部型落葉樹林
    シナノキ、イタヤカエデなどを主とする温帯北部型の落葉樹林は、北海道の中北部に分布しています。亜寒帯性要素に富み、温帯林の代表樹種であるブナを含まない森林で、シナノキ、イタヤカエデ、ミズナラ、ハルニレ、ハリギリなどから成り立っている落葉樹林帯です。
    この森林は、北朝鮮から中国東北部へかけての大陸気候化の温帯落葉樹林と類似しているのが特徴です。

針葉樹林

  • アカマツ型針葉樹林
    アカマツ型針葉樹林
    アカマツ型の天然の森林は、花崗岩地帯の乾燥した尾根筋や急傾斜地に小面積で分布していたと考えられます。現在、九州南部から東北地方にまでみられる二次植生とするアカマツ林の分布よりもかなり狭いと考えられます。
    現在ではアカマツ型の森林は、照葉樹林の成り立つべき暖温帯の山麓から低山地にかけて広く分布し、また照葉樹林帯に現存する森林植生では、クヌギ・コナラ型の森林と並ぶ日本の代表的な二次植生になっています。園内の山地は度々の皆伐によって生じたアカマツ・コナラなどが優先する二次混交林です。

  • モミ・ツガ型針葉樹林
    モミ・ツガ型針葉樹林
    モミ・ツガなどを主とするモミ・ツガ型の森林は、暖帯中部の主体をなす照葉樹林と、温帯下部の落葉広葉樹林との間の中間帯に分布しています。また、一般的に太平洋岸ではツガ林が多く、内陸部ではモミ林がよく発達しています。日本海側ではモミ・ツガ型の森林の分布はみられません。

  • ヒノキ・サワラ型針葉樹林
    ヒノキ・サワラ型針葉樹林
    暖帯から温帯にかけて分布しています。わが国の代表的な有用材であるスギ、ヒノキの天然林はこの型に属していますが、天然性か、人為的に成立したものかが明らかでないものが多くなっています。
    木曽五木として有名なヒノキ、サワラ、アスナロ(ヒバ)、ネズコ、コウヤマキの森林もこの型に属しています。