固体物性とは
固体物性とは
固体物性とは、物質が固体として存在するときの性質や挙動を研究する分野のことです。一般的には、固体の物理的、化学的、電子的、熱的な性質を含みます。この分野では、物質を構成する原子や分子がどのように並び、それが物質の性質 (物性) にどのように影響を与えるかを理解することが重要になります。
物性の種類
電子的な特性
- 固体の電気伝導性(絶縁体、半導体、導体、超伝導体など) を調べます
- バンド理論を用いて、電子がエネルギーバンド内でどのように振る舞うか理解します
磁気的な特性
- 固体が示す強磁性、反強磁性、常磁性、磁化の様子を調べます
- これらの磁性を電子スピンや電子軌道に関連させて理解します
熱的な特性
- 固体の熱伝導性や比熱、膨張率を調べます
- 物質内部の原子振動(フォノン) との関連を理解します
光学的な特性
- 固体試料が光を吸収、反射、透過する様子を調べます
- 光が物質の電子や原子とどのように相互作用するか理解します
何に役立つの?
固体の基本的な性質や仕組みを理解することで新しい材料や製品を作り出したり、既存のものを良くするための基礎を築くことができます。以下にその具体例を挙げます。
材料開発への応用
- 固体の電気伝導性や熱伝導性などを理解することで新しい素材を設計できます
- スマートフォンの軽量化や電気自動車用のバッテリーの性能が向上したのは、固体物性を深く理解した成果になります
電子機器や半導体の進歩
- 固体の電子構造を調べて半導体や絶縁体などの電気的性質を理解することで、高性能な電子デバイスを開発できます
- パソコンやスマートフォンの CPU はシリコンの電気的性質を活用して作られています
新しいエネルギー技術の開発
- 太陽電池や燃料電池など、持続可能なエネルギーを生成・利用するための材料を開発できます
- 太陽光を効率よく電気に変えるための半導体材料の開発は、固体物性の知識にもとづいています
基礎科学の進展
- 原子や分子がどのように振る舞うかを明らかにすることで、自然界の仕組みを理解できます
- 超伝導や量子コンピュータの研究は固体の電子構造や相互作用の知見を基礎にしています
固体の性質を研究することは、新しい技術や製品の基盤を築くだけでなく、環境問題の解決や人々の生活を向上させることに寄与しています。我々の研究グループでは、放射光 (シンクロトロン光) という非常に明るく、高エネルギーから低エネルギーまで幅広い波長を有する光を使って、固体の物性を調べています。