分光法とは
分光法とは
X 線や軟 X 線、真空紫外線の分光法は、物質の性質を調べるための方法です。この技術を使うと、物質の内部構造や特定の元素がどういう状態で存在しているかを詳しく調べることができます。分光法で使う光の波長(X 線、軟 X 線、真空紫外線など) の違いは、光が物質とどのように相互作用するかに影響を与えます。これにより、分析できる対象や得られる情報の種類が変わります。
硬 X 線 (波長: 約 0.01 ~ 10 nm): X 線は物質を深く浸透する能力があり、内部構造を調べるのに適しています
- 結晶構造解析: X 線回折法を使うと、固体中の原子の配置や結晶構造が分かります (例:タンパク質や金属の結晶解析)
- 特定元素の分析: 特定元素の特性 X 線 (吸収端) を利用して、物質内の元素の分布や化学状態を調べることができます (例:X 線吸収分光法)
- 高い空間分解能: 微細なスケールでの構造を明らかにできます (例:ナノメートル級の結晶構造の解析)
軟 X 線(波長: 約 0.1 ~ 10 nm): 軟 X 線は、物質の表面近くや薄い構造を詳しく調べるのに向いています
- 表面化学の解析: 軟 X 線は物質の表面に敏感で、化学的状態や元素の結合状態を調べるのに使われます
- 選択的な元素分析: 特定元素の吸収端で分光を行い、電子構造や酸化状態を調べられます (例: X 線光電子分光)
- 微量分析: 少量の試料や薄膜材料でも詳細に調べられます
真空紫外線(波長:約10~200 nm): 波長が空気中で吸収されやすいため、真空の環境下での使用が必要になります
- 電子構造の解析: 原子や分子の外側の電子 (価電子) のエネルギー準位を調べることができます (例: 真空紫外光電子分光)
- 分子振動・回転の研究: 分子の振動や回転に関連する遷移を観察できます
- 薄膜やガス状物質の分析: 真空紫外線は薄い試料や気体の分光分析に適しています
これらの分光法の応用
これらの分光法は、科学のさまざまな分野で活躍しています。例えば、
- 医薬品開発: 新薬の設計で分子構造を解析します
- 材料科学: 新しい材料や半導体の開発に利用されます
- 環境科学: 汚染物質の性質を調べるために使われます
- 天文学: 宇宙の星や惑星に含まれる元素や分子を調査します
このように、光の波長は対象物の性質や調べたい情報に応じて選択することが望まれます。我々の研究グループでは、放射光から得られるX 線や真空紫外線を研究の目的に応じて選択し、分光法を適切に組み合わせて固体の性質を深く理解することを目標にしています。