記事
2024年4月1日
- リハビリテーション学
- 卒業生
食が好きという気持ちがベース。どんな形でも人に喜んでもらえる仕事がしたい。/吉田 桃子さん(セレッソ大阪スポーツクラブ)
※本記事は、大阪府立大学Webマガジン「ミチテイク・プラス」(2020年11月4日公開記事)から転載しています。掲載されている情報は公開当時のものです。
大阪府立大学卒業後、タマノイ酢株式会社に入社。広報と新卒採用等に携わったのち、タマノイ酢とセレッソ大阪のはじめての試みで出向し、現在はセレッソ大阪スポーツクラブで管理栄養士として働いている吉田 桃子さん。
学生生活で印象的だったことや現在の活動内容などをたっぷりと聞かせてもらいました。
PROFILE
吉田 桃子(よしだ ももこ)
- 一般社団法人 セレッソ大阪スポーツクラブ 管理栄養士
- 智辯学園高等学校 出身
- 2019年3月 大阪府立大学 地域保健学域 総合リハビリテーション学類 栄養療法学専攻 卒業
- 2019年 管理栄養士免許取得
- 2019年4月 タマノイ酢株式会社 入社
- 2020年4月 一般社団法人セレッソ大阪スポーツクラブへ出向
栄養療法学を専攻し、管理栄養士免許を取得されていますが、管理栄養士のお仕事とは具体的にどのようなことをされるのですか?
- 吉田 桃子さん
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健康でいるためには、生活習慣や運動をはじめ、いろいろな要素が必要ですよね。そのひとつの要素であり、絶対に切り離せない“食事”。どう摂るかということはもちろん、子どもたちにはまず食事について興味をもってもらいたいと思い、お話をさせてもらっています。
本来は健康のためにこういう食事を摂りましょうね、ということを伝えたいけれど、全員が食べ物に興味があるかというと実際はそうでもなく、ギャップがあります。そんなときは、その人の興味がある部分を、例えばスポーツに興味があるという人にはスポーツと食事の関係についてお話をする方が、知りたいなと思ってくれるのではないかと思い、関連付けてお話をします。
- インタビュアー
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給食や病院の献立を考える際に管理栄養士は欠かせないというイメージがありますが、それだけではなく、食べることに関心を持ってもらうためのお話をするのも管理栄養士のお仕事のひとつなのですね。
- 吉田 桃子さん
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みなさんが思い描いているような仕事をしている友人もいますし、食品メーカーに勤めている友人もいます。
タマノイ酢とセレッソ大阪、両者にあるのが”地域に貢献する”という想い。地域の力になれること・できることをしていきたいという中で生まれたのが“多くの方に食事の大切さや楽しさを知ってもらうこと”だったのだと思います。
吉田さんはいつから管理栄養士になりたいと思っていたのですか?
実は、受験を控えた高校3年生の時でした。食べ物が好きなので、それに関する勉強がしたいとは思っていたのですが、方向性ははっきりしておらず、食べ物の品種改良などを勉強する学部はどうだろうと思っていたのです。いざ願書を取り寄せてみたときにちょっと違うなと感じて、もっと日常生活にかかわる仕事がしたいと思いました。
分子の世界などではなく、これとこれを食べ合わせたらこういう効果があるとか、そういうことに興味があると気付き、管理栄養士になりたいと思ったのがきっかけですね。
和歌山県出身なので、家から通える大阪府立大学に行きたいと志願しました。
管理栄養士を目指すうえでアドバイスなどありますか?
- 吉田 桃子さん
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たくさんの方に食事のことを伝えるという今の仕事をしていて思うのは、根本的に食べ物が好きじゃないと難しいお仕事ということでしょうか。日常生活についてまわる食事。スーパーフードなどを取り入れている食に興味のある方には「あれって実際どうなんですか?」と尋ねられることもあります。ですので、そういった質問にも答えられるように、常にアンテナを張っていなければと思いますね。
- インタビュアー
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突然の質問にも答えられるような引き出しをもっていないといけないのですね。
- 吉田 桃子さん
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管理栄養士という資格を持った人こそ、アンテナを張り、引き出しを作ることが必要だと思います。友達にも聞かれますし、食事が好きとか、作るのが好きというモチベーションが元からある方がよいのではないでしょうか。
大学時代の友達とオンラインで話すこともあるのですが、食に関する熱量が高い友人が多いので勉強になります。「あのお店のこれがおいしい」とか、アンテナがすごいなと思います。
- インタビュアー
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常にインプットとアウトプットを繰り返すお仕事。好きであってアンテナを張り続けることが大切なのですね。
資格を取る勉強はもちろん大変だったと思いますが、管理栄養士を目指すうえで苦労したことや、府大での学びで役に立ったことなどを教えてもらえますか?
- 吉田 桃子さん
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食べ物のことを勉強するうえで、からだのつくりを学ぶことも大切。具体的な話だとわたしは高校の時に物理選択だったので、生物のことが全然わからず大変でした。
もちろん大学のカリキュラムとして学ぶ場はありますが、それよりも友達に聞いて教えてもらうことの方が多かったなと思います。
あとは、資格の試験前に模試を受けるのですが、ボーダーラインがあって。わたしは居残り組だったのですが(笑)。学校に来て勉強するよう管理をしてくれる制度があってよかったなと思います。さぼらない環境づくりをしてくれていたので、心の支えになっていましたね。
管理栄養士の勉強以外でよかったなと思うのは、一般教養の時間です。地域保健学域でも一年生のときは中百舌鳥キャンパスに通うのですが、いろいろな先生の授業を受けることによって「わたしって普通に生きてきたと思っていたけど、そういう考えもあるんだな」とか「こういう人もいるんだな」と、視野が広がりました。大学にはいろいろな人がいると聞いていたけど、こういうことか!というのを体感した時間でしたね。
- インタビュアー
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いろいろな人がいることを大学で知っておくと、社会に出たときに役に立ちますし、大学はひとつの社会を勉強させてもらう場でもありますよね。吉田さんは大変だと思うことも、明るく、前向きにとらえる力が強いと感じます。
- 吉田 桃子さん
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先生をはじめ、一緒にいて心地良い友人ばかりで、まわりに恵まれていました。人間関係で悩んだこともなかったですし、大変だったのかもしれないけれど、まわりのみんなも同じ環境だったので心強かったですね。
現在、堺市の小学校やセレッソ大阪のスクールで管理栄養士として食を伝える仕事をされているとお聞きしました。どのようなお話をされているのでしょうか?
- 吉田 桃子さん
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堺市の小学校では、健康とバランスのよい食事。特に、朝ごはんに関するお話をさせてもらっています。子どもたちにバランスのよい食事を話すときには食べ物を黄色、赤色、緑色に色分けして、3色を揃えましょうと伝えるのがわかりやすいかなと思っています。
ここでいう黄色とは、ご飯やパンなどの主食になるもの。
赤色は、肉や魚、卵など主菜になるもの。
緑色は、野菜、きのこや果物などの副菜を指します。自分たちでバランスのよい食事を見分けられるように具体例をだして、それが黄色だけなのか、黄色と赤色なのか。色が足りなかったら足そうねとお話をさせてもらっていますね。
今年から始まった新しい取り組みで、一年間に20回前後実施する予定です。東大阪市でも実施させていただく準備が進んでいます。
- 吉田 桃子さん
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セレッソ大阪のスクールでは子どもたちだけでなく大人の方も対象で、競技に合わせたお話をさせてもらっています。スポーツ栄養士の資格を持っているわけではなく、体質によっても異なるので一概には言えませんが、やはり行き着く先はバランスの良い食事と健康。
ランニングクラブの場合、走るエネルギーが必要なので、バランスの良い食事を学んだあとにエネルギーを作る栄養素のお話をしたり、試合前日はどういう食べ物を摂ればいいか、実際に駅伝選手が摂っている食事の話をしたりしています。
- インタビュアー
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管理栄養士という立場で小学校では食事にまつわる入口のような部分を、スクールではさらに一歩踏み込んで具体的なお話をされているのですね。内容を考えるのも吉田さんのお仕事なのですか?
- 吉田 桃子さん
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そうです。運動をしている小学生とそうでない小学生でも違いますし、食に対する興味の度合いが違うので、誰にどのように伝えるかは意識しています。
親御さんが一緒に参加されている場合は、親御さんからの質問も多いので、10月末にオンラインで親御さん向けの企画を考えました。テーマは、朝ご飯の大切さ。
子どもたちに「なぜ朝ご飯を食べないといけないの?」と親御さんが聞かれたときに、「こういう良いことがあるんだよ」と答えられるように、親御さんたちにはまず知ってもらって伝えてもらいたいですし、親御さん自身もそう感じて食べていただきたい。子どもたちのことなので子どもが食べるかどうかは親がいくら頑張っても難しいことがあるかもしれませんが、「朝起きてくれない」という悩みだったら寝る時間が遅いのかもしれないし、「朝は食欲がない」のであれば夜ごはんを食べる量が多くて消化できていないのかもしれない。そういう原因が生活習慣にあるかもしれないことをお伝えさせてもらいたいと思っています。
また、「とにかく栄養バランスが心配」という声が多いので、冷蔵庫に貼れるような表を作ってプレゼントすることにしました。朝ご飯を作ることができるだけ負担にならないように、寝坊したときはこんな食事でいいですよとか、火を使わずバランスの良い食事を摂るには、など日常の素朴な質問にお答えする時間も設けたいですね。
いろいろなシチュエーションを想定して準備をするのは大変ではありませんか?
わたしが親ではないのでわからないこともありますが、職場に親御さんと同じ立場のスタッフがいるので、みなさんの声を聞いて、反映するようにしています。
また、大学での管理栄養士の勉強は、病気の患者さんの食事メニューや給食メニューなど基礎的なことが多かったので、「少食で困っている」「お肉が嫌い」「白ご飯が嫌い」など想定していない質問をいただくと、自分のアンテナが広がります。
準備をしながら常に勉強をしていますし、管理栄養士という立場上、わたしがお伝えすることが100点と思われるので、発信の仕方には気を付けています。
吉田さんが、この仕事をしていて良かったと思う瞬間ややりがい、今後やってみたいことがあれば教えていただけますか?
いつも伝えたいことがちゃんと伝わっているかな?と思いながら、考えたり話したりしているのですが、講演後のアンケートを見ると、子どもたちから50代~70代の方まで、楽しかったとかこういうことをやってみようと思うと答えてくださる方が多くて。
わたしの話を聞いてもらったことで、意識や行動が少しでも変わるきっかけを起こせているのだったらうれしいなと思います。直に反応を感じられる仕事をしているので、喜んでもらえることがやりがいです。
やりたいことが明確ではなかったのですが、出向という機会を与えてもらい、どちらの会社からも自由に、好きなことをさせてもらっていると感じています。
今後、具体的な答えはないですが、その時にできること。社会に求められて、自分ができることの中でいろいろな方に喜んでもらえる仕事がしたいですね。
最後に、母校の後輩や受験生にメッセージをお願いします。
振り返ってみると、バイトをしたり、部活をしたり、大学生活は本当に楽しかったなと思います。自由で居心地がよく、志さえあればなんでもできる4年間。
つまらないなと生活するにはもったいないので、ぜひ「楽しい!」「これが好きだな」と思うことに、パワーを使ってもらえたらなと思います。
受験生のみなさんは、はじめてのことにはじめての状況。コロナがどう影響するのか不安なこともあると思いますが、自分の夢や目標を叶えるということに意識を向けて、諦めないでください。高校3年生の今しかできないこと、今できることをしてほしいですね。このような状況の高校3年生は未だかつてないので、プラスに変えられることがあればいいなと思います。
【取材日:2020年10月14日】
【場所:大阪府立大学中百舌鳥キャンパス】
【取材:株式会社エヌ・アイ・プランニング 合田 紗規(大阪府立大学人間社会学部OG)】
※所属等は取材当時