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2019年12月16日

  • 経済学
  • 卒業生

小さな一歩でも、自分のやりたいことにチャレンジしてみることが大切/認定NPO法人Homedoor 理事長 川口 加奈さん

※本記事は、大阪市立大学Webサイト「ステートメントビジュアル」(2019年12月16日公開記事)から転載しています。掲載されている情報は公開当時のものです。

認定NPO法人Homedoor 理事長

川口 加奈さん

川口 加奈さんの写真

ホームレスの方の路上脱出のための 選択肢を、当事者とともに作っていっています

私は現在、「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造をつくる」ことを目指して、認定NPO法人Homedoor(ホームドア)を運営しています。大阪市立大学の2年生の4月に友達と3人でこの団体を立上げて、2020年に10周年を迎えます。ホームレス状態には決してなりたくてなるものではなく、そうならざるを得ない理由があること。そして、今の日本では、一度ホームレス状態になってしまったら一生、路上生活のままで、凍死や餓死される方もいる…という現状を知り、「路上生活から脱出したい」と思った時に何か少しでも力になれればと当事者の方の声をもとに少しずつ活動を広げてきました。夜回りやポスター・バナー広告でHomedoorという存在があるんだよという情報を届けるところから、食事や衣服・日用品の提供、シャワールームやランドリー、仮眠スペースの提供、看護師による健康相談など、暮らしを支える様々なメニューを無料で利用してもらえるように用意しています。団体設立時から行っているHUBchari(ハブチャリ)というシェアサイクル事業では、自転車の整備や駐輪場の管理などの仕事を提供し、不動産会社と連携して自分で部屋を借りて自立するためのサポートを行います。それにより、一般企業への就職移行にもつながっています。

たくさんの方の支援をいただき、2018年には念願の宿泊施設「アンドセンター」を開設することができました。泊まれる場所があるという安心感を提供することで、相談者の幅も広がりました。2018年度の新規相談者は310名、2019年度は600名ほどになる見込みです。一人でも多くの方にHomedoorという「きっかけ」を活用してもらえるよう、日々、サポートメニューの充実に向けチャレンジを続けています。

川口 加奈さんの写真2

Homedoorの今があるのは、講義での出会いのおかげ

ホームレス問題の研究が進んでいるからという理由で大阪市立大学に進学したのですが、特に印象に残っているのは、経済学部で労働経済を専門とされている福原宏幸先生の労働経済特殊講義ですね。オムニバス形式の講義で、ホームレス支援団体の代表の方など様々な専門家が毎週講師として来られていたので、すごく勉強になりました。現場のいろいろなお話が聞けて、質問もできて、講義の後には名刺交換もさせていただいて。Homedoorを在学中に立ち上げることができたのも、この講義での出会いをきっかけに後日訪問させていただいて、たくさん相談に乗っていただくことができたから。そして、HUBchari事業を始めた時に一番最初に雇うことができたホームレスの方も、この講義に講師で来られていた方の紹介でした。何の実績もない学生団体が初めて人を雇う時のハードルはとても高かったので、本当にありがたかったです。

川口 加奈さんの写真3

やりたいことがあるなら、ぜひ一歩を踏み出して!

市大ブランドって、自分が外に出てこそ発揮できるものだと思います。私自身もHomedoorの立ち上げから今に至るまで、「こういうことをやりたい!」って思った時に、市大生・市大出身ということでその繋がりからいろいろな方にご協力いただけたり、たくさん支えていただけて、今もこの活動を続けることができています。だからぜひ、外に出て自分がやりたいと思ったことを実現していってもらえたらなと思いますね。

それから、在学生の方には、ぜひ学生のうちに何か始めてみてほしいなと思います。社会に出てから始めるよりも、学生時代のほうが時間も自由に使えるし身軽なのでスタートしやすいですよ!私も2年生で活動を始めたことで、卒業するまでにHomedoorで自分のお給料を出せるくらいまで軌道に乗せることができたので、早く始めて良かったなと思っています。小さな一歩でも、自分のやりたいことにチャレンジしてみてくださいね。