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2019年12月20日

  • 生活科学
  • 卒業生

大学時代の学びで得た知識が、 社会人経験で上手く活かされている/株式会社マザーネット 代表取締役社長 上田 理恵子さん

※本記事は、大阪市立大学Webサイト「ステートメントビジュアル」(2019年12月20日公開記事)から転載しています。掲載されている情報は公開当時のものです。

株式会社マザーネット 代表取締役社長

上田 理恵子さん

上田 理恵子さんの写真

“生活を科学する”ことの面白さ

市大では生活科学部・被服学科という学科を専攻していました。高校生の時から染色にすごく興味があり、当時は市大以外で染色について専門的に学べる大学が無かったことが、私の進む道を決定づけたのかもしれません。
大学の授業では、2年生から実験がありました。例えば、衣服気候学という授業では、生まれた地域や季節によって人の汗腺の数がどう変わるか?ということを実験し、データを集めるのです。そういう研究が、化学繊維等の素材の開発へと活かされていくんですね。「生活を科学する」ということは面白い、と授業を受けながら感じる場面が何度もありました。
そこで学んだ様々な知識を活かす形で、卒業後はダイキン工業に就職しました。ダイキン工業に入社してからは、市大との共同研究により、泡による食器洗浄の研究と開発に従事していました。大学時代に染色だけではなく洗浄についても学んでいたので、得た知識が上手く活用されている手ごたえはありました。

上田 理恵子さんの写真2

働くお母さんを応援したい

現在、自分自身の仕事と子育ての両立で苦労した経験を活かして、2001年に株式会社マザーネットという会社を創業し、そこで社長を務めています。社長業も、もう19年目になります。
マザーネットは、「働くお母さんを応援する会社」です。例えば、お子さんが急に熱を出した時に自宅にスタッフを派遣するなど、お母さんがピンチの時に助けるサービスを展開しています。お母さんたちからの強い要望に応え、2002年からは家事代行サービスを始めました。
企業を運営していく中で、市大での「生活を科学する」という学びは様々な場面で役立ちました。保育、料理、お掃除、といったことをサービスとして提供する上で、必要となってくる要素の一つは効率性です。そしてその上位にある概念は科学なのです。例えば、お料理作り置きサービスを2018年より展開していますが、限られた3~4時間で、いかに効率よく、かつ栄養バランスよく並行して調理できる工程を作り上げるか。学生時代の授業で実験計画を立てることを学んだのですが、そこで培われた基礎が今も活きていると感じています。

上田 理恵子さんの写真3

マザーネットが必要なくなる社会を目指して

きっかけは、ダイキン工業で働いていた頃に生まれました。
勤めながら、私自身の仕事と子育てを両立させた経験を、これから結婚・出産する女性たちに伝えることで少しでも役立てたい、という強い気持ちが芽生えたのです。そして1994年に次男を出産する3日前に「キャリアと家庭」両立を目指す会を一人で立ち上げました。自宅の電話を開放して、平日の夜や土日に、悩み相談を無料で受けるという活動をスタートさせたのです。会を作って7年間に、なんと2万件の悩み相談が寄せられました。その声に押される形で、17年間勤務した会社を思い切って退社し、創業したのです。
私を知る、95%の方に反対されましたね(笑)。でも誰かがやらないと世の中何も変わらない。自分たちが必要なサービスは自分たちで作るしかない。今まで研究や開発ばかりやってきて、まったく未知の分野でしたし、株式会社として派遣型病児保育というサービスをやっている前例もなかったので、すごく挑戦的だったと思います。
保育や家事など、今まで家庭の中で行われてきたことがアウトソーシングされる、ということに抵抗の少ない時代へと移り変わってきています。女性たちが自分の能力を活かして世の中で活躍するためには、応援してくれる家族代わりの人の存在が必要になってきているのです。今まで以上に、生活を科学することが、世の中に活かされる時代になってきていると感じています。
私の目標は「マザーネットが必要なくなる社会の実現」です。いつまでもマザーネットが必要な社会は、働くお母さんにとって優しい社会とは言えないでしょう。その日がくるまで、これからも一件一件心を込めて、がんばっていきたいと思っています。