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2019年12月16日

  • 経済学
  • 卒業生

どんな情報でも簡単に手に入る時代だからこそ、実体験から得られる知見が大切/現 太平洋人材交流センター(PREX) 理事長 岡野 幸義さん

※本記事は、大阪市立大学Webサイト「ステートメントビジュアル」(2019年12月16日公開記事)から転載しています。掲載されている情報は公開当時のものです。

前 ダイキン工業株式会社 代表取締役社長

現 太平洋人材交流センター(PREX) 理事長

岡野 幸義さん

岡野 幸義さんの写真

世界が抱える問題にダイレクトで関わる面白さ

私は、卒業後52年間ダイキン工業に勤務しておりました。4年前に退社し、現在は太平洋人材交流センター(PREX)の理事長などの役職を務めております。PREXは、途上国の人材育成とその活動を通した国際交流をミッションにしている公益財団法人です。途上国の、それぞれの行政機関や民間企業の幹部といった方々に対して年間20~30件以上の研修プログラムを催しているのですが、特筆すべきは現在の対象国が世界152か国・地域に広がっていて、マレーシア、ベトナム、ミャンマー、モンゴル、キルギス、ウズベキスタン、そしてアフリカ諸国からも年間合計200~300人が参加しているということです。これまでの参加者数は18,278人に上ります。韓国、中国などからもかつては参加がありましたが、それらの国々はもう経済的に大きく成長し、次のステップに立っています。つまりPREXを卒業した、ということですね(笑)。
PREXに在籍するスタッフは、そのほとんどが大学などで途上国の社会問題・経済問題、文化などを勉強してきた人たちです。日本だけではなく、世界が抱える問題、とりわけSDGsにダイレクトで関われることは達成感や充実感につながりますし、何よりこの社会貢献性の高い仕事には私自身も大きなやりがいを感じています。

岡野 幸義さんの写真2

危険だからこそ、そこでしか見られない景色に感動する

市大時代は何となく山に登りたくて山岳部に入りました。山岳部の活動はケタ違いでしたね。もう厳しいなんてもんじゃなかった。12月28日に、極寒のなか剣岳に登ったこともありました(笑)。雪崩に遭い、突風に飛ばされ。生きているのが不思議なくらいの経験でしたよ。
偉大な先輩方も多くいました。ヒマラヤ登頂にチャレンジした方もいた。それも自力で資金集めをしてですよ。その果敢さ、未知へ挑む気持ちの強さには本当に頭が下がります。
そしてそういう先輩方が厳しさ一辺倒かといえば、そうでもないんです。辛さにへばっているメンバーの荷物を、バランスよくチームで民主的に分配したり。つまり山岳部で私は、これからの人生を歩んでゆく上でとても大切なものをいくつも学びました。きついからこそ、怖いからこそ挑みがいがあるということ。危険だからこそ、そこでしか見られない景色に出会った時の感動が大きいということ。
学生時代は、本当に貴重な経験をさせて頂きましたね。

岡野 幸義さんの写真3

書を持って、世界へ出よう

自分で足を運ばなければ見られない景色。経験しなければわからない感動。そういったものが世の中には、実にたくさんあります。スマホ一つでどんな情報でも簡単に手に入る時代だからこそ、実体験から得られる知見が大切なのです。特に、今のうちから海外へは行っておくべきです。そして外から日本という国を見てください。
とはいえ、若い間に本をできるだけ多く読んでおくことも重要です。とりわけ、学生時代は、歴史や文学、芸術、自然科学などのリベラルアーツに関する本をたくさん読んでおいたらよかったと思っています。
また、グローバル化された現在において、海外の方とコミュニケーションする道具としての英語を身につけておくことは必須です。座学だけではなく実践的に話せる英語を身につけておくことが求められています。
私が現在籍を置いているPREXのメンバーは、まさにそういうことを実行しています。まったく異なる文化圏に身を置き、まったく異なる常識を学んだ人間には、この先の世界を担ってゆけるような強靭な足腰の力が養われている、と私は信じています。