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2024年4月1日

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希望と不安と未知が渾然一体となった未来へ向け、一日一日を大切に過ごしてほしい/横浜国立大学 教育学部 准教授 古本 猛憲さん

※本記事は、大阪市立大学Webサイト「ステートメントビジュアル」(2020年12月29日公開記事)から転載しています。掲載されている情報は公開当時のものです。

横浜国立大学 教育学部 准教授

古本 猛憲さん

古本 猛憲さんの写真

市大の底力を目の当たりにした

物理の道へ進むことを決定づけたのは高校の授業でした。当時の先生の授業がとても面白くて。そこで物理に強く興味が湧いたのと、教育者になって難しいことを面白く教える、ということにも何か憧れのような感情が湧いたのを憶えています。
市大には当時、奥澤徹先生という物理の権威がいらっしゃって。私が高校三年生の頃、トップクォークの発見についてニュースで知ったんですよね。その研究メンバーの一人が奥澤先生だったんですよ。市大の凄さ・底力を目の当たりにしたことが、市大への進学の決め手のひとつになりました。

古本 猛憲さんの写真2

物理の面白さを深く知った大学時代

市大は印象的な出来事の宝庫でしたよ。例えば、とある力学の先生に、少年マンガのバトルシーンとかによく出てくる“気”の玉みたいなものについての説明を求められたことがありました(笑)。あの現象を力学的に解き明かし、レポートを書きなさいと。一生懸命書いたのですが、まあ全部否定されましたね(笑)。
今になって思えば、つまり先生は「無いものは証明できない」ということを教えたかったのでしょう。物事を物理的に肯定する時の証明とはいかに難しいか、学生ながらに痛感しましたよ。そして、だからこそ「有るはずのこと」を証明してゆく物理の面白さと、物事を順序立てて理解してゆくことの大事さも改めて感じました。
この頃はWindows2000とかが台頭していた時代です。物理は手計算も行いますが、手計算には限界があるのでパソコンでプログラムを構築し数値計算も行います。といってパソコンを使い始めたのは遊びがきっかけだったのですが(笑)、それでもこの当時パソコンをおもちゃ代わりにして得た物理以外の知識や好奇心も、少なからず現在役に立っています。全力で遊ぶ、ということで身につくものってたくさんあるんですよね。

古本 猛憲さんの写真3

現在は横浜国立大学で、研究者として原子核の理論研究をするかたわら、教育学部の教員として教鞭をとっています。私一人でコツコツと物理の楽しさを教えてゆくのには限界があるので、それならば私と同じように教えられる人をひとりでも多く育てたい、と思ったんですよ。ですから今は、その目標に向かって邁進しています。
物理とは、元来がよくわからないこと・難しいことを解き明かすのがその本質です。それが前提だからこそ、解き明かせた時の充実感は格別というもの。曲がりなりにも物理の分野で研究を重ね、経験を積んでいる私にとっては、予想が外れることも少なくなっており、それが時に寂しくもありますね。
学生の皆さんの前にあるのは、希望と不安と未知が渾然一体となった未来。心底羨ましく思います。予想もつかない未来へ向け、一日一日を大切に過ごしていってください。