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2020年1月24日

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気配りや助け合い、チームとして何かを成し遂げる尊さを学んだ/株式会社鍜治田工務店 代表取締役社長 鍜治田 八彦さん

※本記事は、大阪市立大学Webサイト「ステートメントビジュアル」(2020年1月24日公開記事)から転載しています。掲載されている情報は公開当時のものです。

株式会社鍜治田工務店 代表取締役社長

鍜治田 八彦さん

鍜治田 八彦さんの写真

「下げ振りの心」をいつも忘れず

私が社長を務める株式会社鍜治田工務店では、建築工事の企画・設計から管理・施工までを執り行う総合建設業を生業としています。
バブル崩壊やリーマンショックといった様々な経済的危機を日本が迎えるたび、建設業はダイレクトにその打撃をこうむってきました。建設会社の仕事が減少するのはまさにそういった時期。これらを境に経営が破綻してしまう同業他社も決して少なくはありません。
しかし当社はそんな時期のさなかでこそ、売り上げを二倍、三倍と伸ばすことに成功してきました。そのステップアップや企業的成長の要素と考えられるものはいくつかあるのですが、決め手となるものが何かと問われたら私は「理念」と答えるでしょう。
「下げ振りの心」、というのが当社の社訓です。〈下げ振り〉とは、建築現場などで垂直を調べる時に使用する道具のこと。地面に向け垂らされた紐の先にある針は、常に地球の中心を指します。つまりどんな時にでもブレることなく正しい方向をまっすぐ見定め、そこを指標として生きるような人間が働く会社であれ、という想いが込められているのです。

鍜治田 八彦さんの写真2

チームで成し遂げることの尊さを学べた

例えば、間違えたことも包み隠さず報告し、頭を下げられる健やかな心。膨大な業者数かつ人手が必要な建築の仕事だからこそ、属する会社の別なくすべての人間が助け合うことで現場が動いている、ということを理解するまっすぐな心。そういった、社会で働く人間として欠かせない心を重視し続けた結果が、今の当社の成長につながっているのだと感じています。
そしてそういった気配りや助け合い、チームとして何かを成し遂げる尊さを学んだのが市大での経験でした。
建築学科というのは、製図の提出が年に3回か4回、義務付けられているんですよ。簡単に完成できるものではないので、どうしても泊まり込む必要が出てくるんです。私の記憶では、年の半分以上、学校に泊まっていたと思いますね(笑)。そして共有する時間が長いとどうしても、人間の嫌なところも見えてきてしまいます。
でもそんな中だからこそ、それでも知恵を出し合うことや互いにフォローすること、相手の視点に立ってモノを見ること、そしてチームで成し遂げることの難しさと尊さを学べたのだと思います。「すべては人に在り」という私が大事にしている想いも、その時の経験から得た言葉なのです。

鍜治田 八彦さんの写真3

自分の信念は間違っていなかった

ありがたいことに私は、多くの方が感じるようなストレスをあまりストレスと感じず社会人としてステップアップすることができました。それは仲間とモノを作り上げることの喜びを学んでいたからだと考えています。
私は実際の建築現場を経験したのち、四代目社長として、父より株式会社鍜治田工務店を継ぎました。現在も社長として、マメに現場に足を運び、協力会社の職人さんなどから当社についての話を聞くようにしています。その際「鍜治田さんの現場は協力会社さん同士の仲が良くて仕事がしやすい」といったお声を聞くたび、自分が信念としていることが間違っていなかったと感じて嬉しくなります。
そのもとになるのは「下げ振りの心」であり、実際に協力会社さんと力を合わせて現場を作っていってくれているのは、愛すべき社員の皆さん。そしてそのきっかけとなったのは、市大での経験です。
私は母校を愛しています。育てられた、という意識があるからです。私一人の力など貧弱なものですが、それでも市大からの学びを経て、当社の成長の一翼を担うことができていると思っています。