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2024年4月1日

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やってみなはれの精神。何事も枠にとらわれずクリエイティブな思考で楽しむことを大切に。/作家 松宮 宏さん

※本記事は、大阪市立大学Webサイト「ステートメントビジュアル」(2020年5月27日公開記事)から転載しています。掲載されている情報は公開当時のものです。

作家

松宮 宏さん

松宮 宏さんの写真

自分が一番やりたかったことについにたどり着くことができた

学生時代から、ぼんやりとですが、プロの小説家になりたいと思っていました。「物語をつくる」ということがしたかったんですね。人生はいろいろなことの巡り合わせです。市大を卒業後、縁あってアパレルの会社に就職。10年、20年とブランディングやマーケティング系の業務をしていく中、時代は進み、売上促進など広告宣伝で謀る時代から、ブランドや店舗空間に「物語」を展開することが求められるようになり―。結局、私自身が目指していた道を進んでいたわけです。そして、年齢とともに一通りの人生経験、社会経験を経た時、「自分の物語をつくる」という路線へ、素直に乗り換えることになりました。
2000年に新潮社の日本ファンタジー大賞でベスト4に残り、審査委員長だった作家の井上ひさしさんにちょっと誉めてもらえたというのが転機でした。これはもう、本気で小説を書こうと。長い時間を経て、自分が一番やりたかったことに、ついにたどり着くことができました。

松宮 宏さんの写真2

結末は途中でひらめくから物語はおもしろくなる

様々な社会経験を経てから小説家としてのチャンスがやってきたので、私のつくる物語は、今世の中がどういう状況になっていて、その上に人間を重ねるという創作になっています。アパレル業界にいた頃、日本中の商店街からはじまり、世界20カ国以上巡ってたくさんの人と出会いました。ニューヨークでは現地企業の社長になるようなこともありました。世の中の移り変わりを、日本と世界のあちこちで、いろいろな異文化も、必然か偶然か体感しながら、見て、考えてきた経験がいま、物語づくりに、圧倒的に活かされている、そんな感じです。
作家には二つのタイプがあると思っていて、きちんとプロットを決めてから執筆するタイプと、思いついたらまず書き始めて結末は途中で思いつくというタイプ。私は後者のほうですね。最初から結末が決まっていたらすべてが予定調和になってしまう。もちろん、思いつきも、ある程度熟成させないと書きはじめられませんが、途中で何かが突然ひらめくからこそ物語はおもしろくなる。スティーブン・キングも「途中で意外な展開を思いつかない限りは、その作品は失敗である」と言い切っています。予定調和させないものを、「結」に至るまでどうやって楽しい物語にするか。独自性があってなおかつ客観性があるか。創作の難しさですが、それこそが「ものをつくる」魅力で、一番わくわくするところです。このプロセスはビジネスにも共通すると思います。とにかく、自分でひねり出した物語を、何人かの人にでもおもしろいと感じてもらえたら、作者としてこれほど嬉しいことはありません。

松宮 宏さんの写真3

学生の今だからできることを、たくさん経験してください!

大学では、とにもかくにも精一杯勉強してください。どんな学びも、いずれ「あの時勉強したことが役に立っている!」とわかる時が来ます。私は文学部で心理学を専攻して実験心理学を学んだんですが、モノの見方や見え方、注意、反応時間の測定など、仕事で役立つと思っていたわけではありませんでした。しかし、どうすれば商品戦略が売り上げにつながっていくかなどを突き詰めていくと、最終的には「人間とは何か」というところに必ず戻っていくんです。店舗の空間デザインをする時、お客さまにどう歩いてもらうかという動線計画を立てるのに、人はどういう時に何に注目したり、逆に注意散漫になったりするのかという勉強をしたことがなければ、戦略として考えるきっかけもなかったでしょう。基礎を学んだ授業の価値は、20年くらい仕事をしてから気づくことができたといえます。自然科学や基礎学問は、学生の時はやらされている勉強になりがちですが、それらの知識は、相当の時を経て、忽然と人生の糧になるのです。在学中の「時」は宝です、一日一日を充実させてください。青春の素晴らしさは過ぎ去ってからわかるものかもしれませんね。感傷的ですが。
それから、もう一つ。世界に出て、いろいろな体験をすることをおすすめします。一年くらい世界を見てから就活してはどうでしょうか。大阪人の元気や起業精神の源は、好奇心からくる活力です。やってみなはれの精神。何事も枠にとらわれずクリエイティブな思考で楽しむことを大切に。予定調和では普通のことしかできません。みなさん一人ひとりがもっとアクティブになって、市大が元気になっていってくれたらいいなと願っています。