記事

2024年12月2日

  • 経済学
  • 在学生

グローバルな視点でヤングケアラーに適切な支援を届けたい/王 子言さん(経済学研究科)

大学院経済学研究科博士後期課程3年の留学生、王 子言(おう しげん)さんが、2024年9月に医療経済学会の「学会論文賞」を受賞しました。そんな王さんに研究内容や将来の目標について詳しくお話を伺いました。

受賞論文(医療経済研究 Vol.35 No.1 2023に掲載)
『日本のヤングケアラーのケア役割とケアに対する肯定的・否定的反応の関係―国際指標PANOC-YC20を用いた実証分析』
著者:王 子言、牛 冰、山野 則子
DOI:10.24742/jhep.2023.03
医療経済研究 2023年度(医療経済研究機構Webサイト)

王 子言さん

PROFILE

王 子言 (おう しげん/WANG ZIYAN)

  • 大学院経済学研究科博士後期課程3年

    中国 江蘇省南京市 出身
    2018年3月に南京航空航天大学卒業後、来日
    2020年4月 大阪府立大学 大学院経済学研究科 博士前期課程 入学
    2022年4月 大阪公立大学 大学院経済学研究科 博士後期課程 入学
    2025年3月 大阪公立大学 大学院経済学研究科 博士後期課程 修了予定

※所属・学年は取材当時

今回受賞した論文内容とテーマを選んだ理由を教えてください

今回の論文は、ヤングケアラーが担う介護役割と、彼らが感じる肯定的・否定的な感情の関係を分析したものです。国際指標であるPANOC-YC20を使用し、日本のヤングケアラーが直面する日常のケア負担が、心理的および社会的にどのような影響を与えているのかを実証的に研究しました。

日本の高齢化が進む中で、若者が家庭内で介護を担うケースが増加しています。彼らへの社会的サポートが依然不足していると感じ、この研究を通してヤングケアラーの問題をより広く認識してもらい、彼らに対する支援体制の整備に寄与できればと思いこのテーマを選びました。

初めて日本語で論文を書いたので、言語面での難しさもありましたが、共著者である牛 冰(ぎゅう ひょう)准教授や山野 則子教授に支えられて無事に執筆を終えることができました。

※PANOC-YC20…ヤングケアラーが家族などのケアをする中で感じる肯定的および否定的な感情や影響を測定するための指標。

表彰状を持つ王さんと牛准教授
授賞式での記念写真(左から牛 冰准教授、王 子言さん)

現在はどのようなテーマで研究に取り組んでいますか?

現在行っている研究は大きく二つあります。
一つは、今回受賞した論文に関連していて、ヤングケアラーの教育や社会的なつながりが彼らのメンタルヘルスにどのような影響を与えるかについて、さらに詳しく調査しています。それをもとに、さまざまな支援策がどの程度有効かを分析し、より適切な支援の提案を目指しています。

もう一つは、長期介護リテラシーに関する研究です。介護リテラシーとは、高齢者やその家族が適切な介護サービスを選択し利用するために必要な知識や理解のことです。この研究では、介護に関する情報提供の効果的な方法を探り、介護リテラシーを向上させるための具体的な施策を提案し、介護の質を向上させることを目指しています。

インタビュー中の王 子言さん

留学先として日本、そして本学を選んだ理由は?

日本は高齢化が中国に比べて進んでおり、高齢者福祉や介護に関する研究が非常に活発に行われています。そのため、医療経済学の分野で研究を深めるには最適な環境だと感じました。さらに大阪の人々はどこか故郷である南京の人に似ていて親しみやすく、交流しやすい雰囲気も大きな魅力でした。

大阪公立大学を選んだ理由としては、牛先生のような国際的な視野を持つ優れた教授陣が揃っており、充実した研究指導が受けられることも大きな決め手でした。加えて、フェローシップの奨学金を利用することで、経済的な負担を軽減し、研究に専念できる点も大きかったです。

今後のキャリアプランは?

博士号取得後は、引き続きヤングケアラーや高齢者ケアに関する研究を続けたいと考えています。大学や研究機関で研究職に就き、学術的な知見に基づいて社会に貢献する政策提言を行いたいです。ヤングケアラーや高齢者ケアに関する問題は、今後も日本を含む多くの国々で重要なテーマとなると考えています。

また、将来的には国際的な研究プロジェクトにも参加し、世界的な視点で福祉や介護の課題に取り組みたいと思っています。多くの国々と連携して分析を行い、その国にあった適切な福祉政策をつくりたいと考えています。

インタビュー中の王 子言さん

これから留学を考えている学生に向けて、メッセージをお願いします

留学には多くの挑戦が伴いますが、それ以上に得られるものが大きいです。異なる文化や新しい環境での経験は、視野を広げ、自分自身の成長につながります。特に日本では、人々の親切さや学術的サポートが充実しており、安心して勉強に集中できます。大阪公立大学は留学生への支援が手厚く、挑戦する価値が十分にある環境です。ぜひ新しい一歩を踏み出して、挑戦を楽しんでください!

 

参考リンク