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2024年12月5日
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「光」を通して感動を届けたい。2023年から御堂筋イルミネーションのデザインを担当/久保 綾佳さん(照明デザイナー)
大阪市立大学生活科学部居住環境学科を卒業して、大手住宅設備関連企業に入社し、その後照明デザイン事務所を経て独立。大阪の冬を彩る御堂筋イルミネーションのデザインを2年連続で担当している久保さんに、御堂筋イルミネーションへの思いや卒業から今までの歩みについてお聞きしました。
2023年の御堂筋イルミネーションの様子
2023年の御堂筋イルミネーションの様子
PROFILE
久保 綾佳(くぼ あやか) 合同会社wakka 代表 照明デザイナー
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2011年 大阪市立大学生活科学部居住環境学科卒業
2011年~2015年 パナソニックホームエンジニアリング株式会社
2015年~2019年 有限会社スタイルマテック
2019年 wakka 設立(独立)
2023年 合同会社wakka設立(合同会社wakka Webサイト)
2年連続コンペで採択され、御堂筋イルミネーションのデザインを担当されたとのことですが、見どころなどを教えてください。
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2024年の御堂筋イルミネーションのデザインコンセプトは、「Grow Light‐育てる光‐」で、見て楽しむだけではない参加型のイベントを企画しました。北御堂「光の箱」ワークショップで参加者が作った392個の光の箱を展示するなど、みんなで作ることを大事にしています。2023年の御堂筋イルミネーションでは、皆さんから「すごくきれい!」という感想はたくさんいただいてうれしかった一方、どうしても受け身というか、見て楽しむもの、になっていましたので、2024年は参加型で何かできないかと思いワークショップを企画しました。想像以上にたくさんの方に参加していただき喜んでもらえて、手応えを感じています。
また、「梅田吸気塔」のライティングなど、新たな試みも見どころの一つです。実は、今回のコンペは2024、2025年の2年間が対象でした。というのも、2025年に開催される大阪・関西万博の期間中も御堂筋をライトアップするからです。2年かけて育てていく光です。
2024年の御堂筋イルミネーションは12月31日のカウントダウン後、25:00で終了しますが、万博が始まる4月に向けてすぐに準備が始まります。2025年は、春から冬にかけての長い期間、御堂筋イルミネーションが実施されます。イルミネーションというとなんとなく冬のイメージがありますが、どんなイルミネーションになるか楽しみにしてほしいと思います。ワークショップ「光の箱」
制作する光の箱の説明を受け、自分が作りたい場所の箱を選ぶ
光の箱の材料
アルミシートをはさみで切って、テープで筒状にして箱の中へ
好きな色のセロハンを箱にかぶせる
完成した作品
自分が選んだ場所にセットしてライトアップされた光の箱
久保さんの現在のお仕事と、これまでの経緯について教えてください。
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現在は、「合同会社wakka」の代表として、住宅や店舗、クリニックなどの建築照明や、イベントなどで光の演出をデザインする仕事をしています。
私が大阪市立大学生活科学部居住環境学科に入学したきっかけは、テレビで見た住宅のリフォーム番組です。「こんなに人を感動させられる仕事ってすごい!」と衝撃を受けました。高校時代は文系だったのですが、建築設計に関わりたいと思って生活科学部に入りました。大学で建築模型を作って撮影するときに、ここに窓を作ったらどんな光が入るんだろう、中庭を作ったらどういう光が入ってくるだろう、と建築設計よりも光に興味がでてきました。そういえば、以前から写真が好きで、光と影でシルエットになっているような逆光の写真が特に好きでしたね。
建築設計を仕事にしようという気持ちは徐々になくなり、研究室を選ぶときには、まち歩きをしてまちづくりやまちの歴史の研究もしていた谷 直樹先生の研究室に入りました。卒業後、パナソニックホームエンジニアリング株式会社(現パナソニックEWエンジニアリング株式会社)に入社し、ショウルームに勤務しました。基本的に個人のお客さまの住まいが対象でしたから、住宅設備全般のご相談の中で、照明について提案することもあります。しかし、もっと照明に関わりたいという気持ちが強くなり、思い切って照明デザインの事務所に転職しました。
照明デザイン事務所は、建築照明か演出照明か、どちらかをメインに手掛けていることがほとんどで、転職した照明デザイン事務所は建築照明が中心。この事務所では、照明計画や、照明コンサルティング業務を担当し、大きな病院やホテルの照明デザインに設計から完成まで関わりました。転機となったのは、2018年の御堂筋イルミネーションのコンペで、事務所の提案が採用されたことです。当時主担当として、実施設計から監理業務までを担当しましたが、この時初めて演出照明の世界に触れました。建築照明も大学で学んだことを生かせる部分が多くて楽しかったですが、演出照明も魅力的だと思いましたね。 その後、2019年に独立しました。
独立してからは、建築照明と演出系の照明の両方を50対50の比率で手掛けています。どちらも対応している照明デザイン事務所は珍しいと思いますが、これからもどちらも続けていきたいです。
大企業から照明デザイン事務所に転職して、その後独立しましたが、学生時代には、こんな道を歩むことになるなんて全く想像もしていませんでしたね。やりがいを感じるのはどんな時ですか。
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やっぱり、お客さまが喜ぶ顔を見た時や感動してくれた時は本当にうれしいです。 建築照明の場合は、オーナーさんの意向をできる限り実現できるようにします。いろいろな制限がある中でいかにオーナーさんの希望をかなえるか、とことん考えます。 イベントなどでの演出系の照明は、自由度が高く光の実験ができるのが魅力です。
事務所の名前「wakka」には、人との「縁」を大切にしたいという思いを込めています。おかげさまで、一度お仕事をご一緒した方からリピートで依頼をいただくことが多いです。独立にあたっての理念「空間と人をつなぐ光を」を大切にしていきたいです。照明デザインの仕事は、図面は一人でも引けますが、そのデザインを実現するためには多くの人との共同作業が必要です。会社を大きくするというよりは、信頼できる仲間を増やして、チームを組んでいろんな仕事ができるようになりたいですね。ゼロからイベントを立ち上げられたらいいなと思っています。
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後輩へのメッセージをお願いします。
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学生の時に学んだことは、社会に出てからの仕事に直結しなくても、自分の中のベースとして生きてくると実感しています。
決して無駄にはなりません。 私は学生時代、ボランティアやアートイベントなどに参加して、他の大学の友人もできました。誰かに誘われたら、とりあえず行ってみる、自分にないものを持っている人に会いに行ってみる、という感じでしょうか。 広くいろんなものを見て、何となく心に留めておく、そうするといつか何かにつながることがあるんです。 幅広い知識をどんどん取り入れてほしいし、積極的に行動してたくさんの人に出会ってほしい。そうすることで得られるものは大きいと思いますよ。
自分の可能性を決めつけずに、心が動くものには勇気を持って飛び込んでほしいと思います。参考リンク
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