記事
2025年2月28日
- 教員
大阪・関西、そしてOMUが目指す未来は/鳥井 信吾さん(サントリーホールディングス株式会社代表取締役副会長 大阪商工会議所 会頭)

抱負や経営哲学について - 挑戦のDNA -
サントリーさんにおかれましては、ますますグローバルに発展されて、その原動力、DNAが「やってみなはれ」ですね。一方で日本は今、どこか元気やチャレンジが足りない。この言葉はそれに対するメッセージにも感じられます。
創業者・鳥井信治郎は飽くなき探求、飽くなき前向き。彼はこの事を母親から学んだと言っています。それも言葉ではなく行動で教えられたと。大阪商人の気概にもそういうところがあったのでしょう。松下幸之助さんや安藤百福さんといった方々も、まさに前向きの人。「へこたれず、あきらめず、しつこく」と、弊社会長の佐治もよく言っています。これは言葉でなく、五感で感じる姿勢みたいなものですね。
- 学内ではさかんに夢を持ちましょう、ポジティブにチャレンジしましょうと言っています。
夢を持ちましょうっていうことと「やってみなはれ」は、同じ根っこだと思うんですね。頭の中にイマジネーションを結んでいる。それが見えてるんでしょうね。夢がないとやれない、やる気になれない。やり抜くエネルギーというのはやはり、思い描いた夢があればこそですよね。あとは朝令暮改も大切ですね。それがないと絶対に「やってみなはれ」はできませんよね。同じことやってたらどっかで間違って、もうそこで諦めてへこたれますよね。間違ったら変えて、プライド捨てて周りにごめんなさいと言って、夢を持ってまた進むことが大事だと思います。
関西経済と2025万博について -主役は「世界」。本気のリアルを夢洲で -
- 福島
いよいよ大阪・関西万博の開幕が近づいてきました。大商としてもサントリーとしてもいろいろやられているかと思います。意気込みや思いを少しお聞かせいただければと思います。
世界158の国と地域、国連・EU・アセアンなど7つの国際機関、そして民間が参加します。大阪はインフラ整備や会場のオペレーションを担う、いわばホストという位置づけで、主役は「世界」なんです。海外各国が本気になってやっています。かなり一生懸命なんですよ。大小様々な国、中には戦争で絶えざるリスクのただ中にあるようなところも、6ヶ月間大阪の万博会場に集まってくれるわけですね。この意味はここにきて大変高まっています。各国とも自分たちの考え方、技術、文化、そしてこれからの世界。これを表現しようと相当な意気込みで準備されてます。バーチャル万博もやります。やるんですけども、世界が本気になって示すリアルが体験できる場が万博だと思うんですね。それぞれが自分たちの国の考え方や最先端技術、文化や自然などを、世界で示したいと、ともかく海外各国は気合が入っています。すべてを見ることは1日や2日ではできませんけども、それぞれの国が「世界」をどう見てるかということを、我々はこの地で理解できる。そこがとっても大きいことだと思っています。
- 福島
本学も飯田グループホールディングスさまと共同で、大学で唯一、パビリオンを出展します。また、万博に向けたボランティアリーダー育成プログラムや医学部・病院からの救護・介護ボランティア派遣など、地元の大学として成功に向けたサポートをしていきます。我々にとっても得難い経験になるはずです。
素晴らしいですね。そういう取り組みを、ぜひアピールしていただきたい。大学は知の原点です。大阪地元の大学ですし、行動するインテリジェンスとして、街に出ていくという姿勢をぜひ。
万博を"てこ"に
- 福島
万博からの、大阪・関西の次の成長。ポスト万博について大商の会頭として何かお考えはありますか。
大阪ヘルスケアパビリオンで、441社が週替りで技術革新のテーマに沿った展示を行います。オリジナルの技術を使った夢のあるチャレンジです。そんな441社が集まった万博が終わった後、それで終わりなのか。いや、そうじゃないはずだと。万博という機会に共に取り組んだ、その夢をさらに続けて、発展させていきたいんですね。441社、中小企業や町工場・スタートアップですが、ここに大きな企業が加わってもいい。違うところと接触すると、そういう考え方とかやり方があるんやなって発見することってあると思うんですね。それも進歩なんです。技術的なことも進歩だし、うちのできない技術をこっちに持ってくると、ほなできるやないかという視点のシフトも進歩です。それぞれユニークなものを持ち寄って、試作・交流から技術革新・販路拡大へと繋げる。簡単ではないですが、万博で高まった機運に乗せて、共に大阪441社+αの中小企業・町工場・スタートアップがイノベーションできるエコシステムの仕組みが作れないかと考えています。

OMUへの期待・エール - 目線は海外に。世界で輝く大阪公立大学へ -
鳥井さまにも建設現場を見ていただきましたが、秋には森之宮キャンパスが開設します。ここを教育と研究の知の拠点に、かつ産学官民プロジェクトの司令塔にしようと。オール大阪で何かできるんじゃないかと思っています。また国際化推進として、海外拠点の拡充や職員の海外派遣、また英語で履修・卒業できるコースの実現に向けた検討を進めています。
森之宮キャンパスは素晴らしい。都市空間が大学の内部に入った「新しい大学都市」です。大阪城という大阪のシンボルのお堀と緑が常に見える。これは本当に素晴らしい。必ずイノベーションが生まれる拠点になりうると思います。また国際化の観点では、海外の情報が日本に入ってこなさすぎてる。もう一周遅れるぐらいの差がついちゃいました。ぜひ海外に拠点を作り、メンバー・住人として人を入れるくらいのことが大学でも必要ですね。
私が思うのは、ブランド力を高めようということなんです。それにはまず研究力の強化、そして自分たちの研究はこうだという見える化です。そうすることで人・情報・資金、そして良い学生がたくさん集まります。加えて、本学ならではの強みとして、都市シンクタンク機能と技術インキュベーション機能に注力したいと思っています。我々はまず大阪の成長と発展に貢献する。それをベースに世界で輝く大学になろうと言ってます。
大阪公立大学にはぜひ、目線は日本ではなくあくまで海外で、そして世界を相手にしていただきたいですね。世界に出てほしいなと。それから時代に逆らっていただきたい。今の時代はどんな時代か、それから大阪の深い部分、ディープ大阪にぜひアプローチしていただきたい。それとDX。それこそカリフォルニアのシリコンバレーでありニューヨークのウォールストリート。ものづくりと金融とITは一体です。大阪が大阪公立大学によって生まれ変わる可能性はあると私は思いますよ。とても期待しています。
プロフィール
鳥井 信吾
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伊藤忠商事を経てサントリー(現サントリーホールディングス)に入社。
現、同社代表取締役副会長。大阪商工会議所会頭、日本商工会議所副会頭。
公立大学法人大阪 経営審議会外部委員、公益財団法人サントリー文化財団 理事長、ダイキン工業 社外取締役 等、兼職多数
福島 伸一
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松下電器産業(現 パナソニックホールディングス)に入社、同社代表取締役副社長、
関西国際空港 代表取締役社長、新関西国際空港 代表取締役会長、大阪国際会議場 代表取締役社長 を経て現職