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2025年2月26日
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地域の課題解決のために~SDGs達成を目指して~/商学部「地域金融論」2025年1月20日授業レポート(担当:北野 友士教授)
2014年、東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を高めることを目的として地方創生が提唱されました。地方を活性化させるには、地域経済と雇用の担い手である中小企業と、その中小企業を支える地域金融機関の役割が重要です。「地域金融論」では、地域金融の現状と課題を把握し、中小企業金融の特徴と地域金融機関の役割を理解したうえで、地域課題の解決に向けた地域金融の役割について学びます。

2025年1月20日(月)の第14回授業では、大阪府政策企画部の和田 洋一様を講師に迎え、大阪府の現状や取り組みを紹介してもらい、身近な事例を通じて、学生が考えを深める契機となりました。
前半は北野先生が地方財政と財源の問題に焦点を当て、地方交付税制度や地方債の現状と課題について解説。少子高齢化による地方財政の悪化や、地方自治体が直面する社会課題に対する財源確保の重要性についても触れ、地方債発行に関する金融環境の変化や、ソーシャルインパクトボンド(SIB)の活用事例が紹介されました。
後半は和田様に登壇していただき、大阪府の現状と取り組みについて講義を行いました。講義後は学生からの質問に対応。授業を受けた学生からSDGs宣言を提出してもらいました。
「地域の課題と金融機能を活かした課題解決 地方財政と財源」 北野 友士教授
地方財政の問題として、税収が都市部に集中し、地方に十分に行き渡らない現状を説明。地方交付税制度の仕組みとその重要性について解説しました。
さらに、地方債の発行状況とその課題を提示し、少子高齢化による貯蓄率の低下が地方財政に及ぼす影響を指摘。地方債の発行に関しては、既存の地方債とは別に新たな資金調達手段としてレベニュー債と永久債の導入の検討が必要であるとも指摘しました。
・レベニュー債:特定の事業収入を元に発行されるためガバナンスが効きやすいとされるが、信用リスクが高い点が課題。
・永久債:元本返済義務がなく、企業の自己資本に近い資金調達が可能だが、投資家のガバナンスが働きにくいことが懸念。

また、社会的課題解決のための資金調達手段として、ソーシャルインパクトボンド(Social Impact Bond, SIB)も紹介。イギリスでの事例を紹介しながら、学生の就職支援やホームレス問題の解決が社会全体に与えるプラスの影響を強調し、大阪府のSIBや医療・ヘルスケア関連のスタートアップ支援の事例も紹介しました。成功報酬型のSIBがリスクを軽減し、効果的なプログラムを見極める手段として有効であると述べました。
「大阪の現状と取り組みについて」 大阪府政策企画部 企画室 連携課 和田 洋一様

初めに、大阪の面積や人口、経済規模などの概要を説明。その後、現在の大阪の財政状況や減債基金の運用、財政の健全化に向けた取り組みを紹介しました。
大阪府の財源に頼らない取組みとして、クラウドファンディングを活用したNPO支援のプロジェクトを動画を交えて紹介。行政だけで全ての問題を解決するのは難しい時代になっているため、NPO、住民や企業の積極的な参加が求められていることを強調しました。
また、2025年開催の大阪・関西万博とSDGsに関連する取り組みや、「Osaka SDGsビジョン」を説明し、万博開催都市としてSDGs達成に向けて世界をリードする都市を目指していると述べました。
最後に、「自分が住みたいと思う社会・世界とはどんな世界なのか、それを実現するためには何が必要か、自分には何ができるのか」を考えてほしいと呼びかけ、講義を締めくくりました。
商学部2年生 中尾 壮良(なかお そら)さん
大阪府の方の説明を通じて、大阪府の現状について詳しく知ることができました。また、大阪府が推進しているSDGsの取り組みについて具体的な事例を紹介していただけて良かったです。特に、泉佐野市での空き家を活用した民間主導のプロジェクトは面白いと思いました。
この授業を通じて、僕たちが今後どのような社会で生きていきたいのか、そのために必要なことは何だろうと考えるきっかけになりました。

北野教授のコメント
商学部の学生は当然ながらビジネスへの興味が強く、また一方で社会的な課題などへの意識も高くて、商学部教員として非常に嬉しく思います。ただ、どんなに素晴らしいビジネスのアイデアや高い志があっても、お金の裏付けがないと持続可能ではありません。二宮尊徳の理念として伝わる有名な言葉に、「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」というものがあります。たとえ善意から発した社会課題解決のための取り組みであっても、そこに関わってくれる人たちが何らかの利益を得られる(少なくとも損をしない)仕組みを考えることの重要性について、本講義を通じて学生たちに少しでも伝わっていれば幸いです。

大阪府政策企画部の和田様(左)と北野教授