お知らせ

2022年4月11日

大阪公立大学
学長　辰巳砂 昌弘

新入生の皆さん、大阪公立大学の学部・学域ならびに大学院研究科への入学、おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。

大阪公立大学はまさに今開学したばかりの新しい大学です。皆さま方はその記念すべき年に入学された一期生です。

そういう皆さんをお迎えして、本日ここに多くのご来賓のご臨席を得て、オンラインを併用した形式ではありますが、盛大に入学式を挙行できますことを大変嬉しく思います。

本日大阪公立大学に入学されましたのは、学士課程、大学院博士課程合計4,438名の皆さんです。本学を代表して、皆さんを歓迎します。また、この日を心待ちにしてこられたご家族やご関係の皆様にも、心からお祝い申し上げます。

丸2年に及ぶパンデミック下での生活は、すべての人が生まれて初めて体験していることです。皆さんの場合は、この時期が受験の年と重なりました。この不安な2年間、受験を乗り越えて来られた皆さんには、その努力と忍耐に敬意を表すとともに、心からお疲れ様と申し上げます。その上で、このコロナ禍がもたらす社会の変化に今後どう対応するかは皆さんにとっても大変重要なテーマになると思います。これまで一部でしか行われていなかったオンライン会議やテレワークが、広く一般的なものになりました。これはこのパンデミックが終結したのちも、元に戻ることはないでしょう。一方で「デジタル活用によるリアル価値の向上」といった動きは加速されるでしょう。皆さんには、ポストコロナ時代の新しい価値観を予測し、この変化する時代に翻弄されることなく、これから始まる新しい人生の新しいステージをスタートさせていただければと思います。これから人々の価値観はますます多様になると思われます。本学で学ばれる皆さんには、まずはその多様な価値観を尊重しあえる人になっていただきたいと願っています。

さて、本学の基となった大阪市立大学、大阪府立大学という2つの大学はいずれも140年の歴史を有する伝統ある大学で、それぞれ大阪商業講習所、獣医学講習所を淵源としています。大阪商業講習所は現在の商学部の前身、獣医学講習所は現在の獣医学部の前身です。私は、大阪公立大学の初代学長として、こうした前身校を支え、育んでいった先人の思いは、大阪公立大学にも引き継いでいくべきもの、誇るべきものとして守っていきたいと考えています。

両大学とも新制大学のスタートは73年前の1949年ですが、大阪府立大学は工学、農学が中心となって「浪速大学」という名称で始まった後、統合改組を繰り返しながら｢大阪府立大学｣と改称されて発展してきました。そして2005年には、大阪府立の「大阪女子大学」、「大阪府立看護大学」と統合して今に至る大阪府立大学が誕生しています。旧大阪府立大学は「実学を重んじる大学」として、大阪女子大学は「リベラルアーツ」の理念のもと、大阪府立看護大学は質の高い医療専門の高度専門職業人養成大学として、大阪と我が国の学術研究と高等教育の発展に大きく寄与してきました。一方、大阪市立大学は、旧制大阪商科大学を母体に設立され、後に医学部となる大阪市立医科大学と合わせて、新制大学設立当初から今の姿に近いフルスペックの総合大学で、今日までその良き伝統を守り抜いてきました。これまで「都市とともに」の理念の下、その都市を支える人材育成と産業活性化や健康増進などに貢献してきました。

様々な大阪の公立高等教育機関が合流することの総仕上げとして、この大阪公立大学の開学が位置づけられると私は考えています。そして、この全く異なる文化と伝統の出会いと調和こそが、12学部･学域による「総合知」と共に創る「共創」を掲げる大阪公立大学が今後発展するための原動力と考えています。

さて、本日入学式を迎えられている皆さんに改めて問いますが、大学とはどういうところでしょうか。これまでの教育機関との違いは何でしょうか。最も大きく異なる点は、研究・社会貢献の現場で、教育が行われていることです。そのことこそが、皆さんが生きた学問を身につけ、生涯学び続ける原動力になるものと考えます。大学や大学院では、学生は「自主・自立」のもとで学ぶことを前提にしています。大学で用意されている講義・演習・実験・実習などは、皆さんが自身で習得し成長する「学び」を、最適な形でサポートするためのものです。また大学では、どんな学問を身につけるかについても、幅広い授業等の選択肢の中から自分で履修計画を立てるのが基本になります。皆さんが将来社会に出て、様々な課題に取り組んでいくとき、1つの学問分野だけで解決できることは殆どありません。本学には総合知を駆使することの出来る12学部・学域、15研究科が提供する多彩なカリキュラムはもとより、副専攻や留学プログラムなど様々なメニューが用意されていますので、皆さん独自のカリキュラムを構築して、「学び」を充実させてください。

大阪市立大学・大阪府立大学の大学院ではこれまで、「学び」の計画を自らデザインすることを徹底した博士課程教育リーディングプログラムを共同で進めてきました。これは、産業界で活躍できる研究リーダーを育成するための教育プログラムで、その修了生は就職先の企業等から高い評価を戴いています。さらに文部科学省からは、事後評価として最高位のS評価を得ています。このプログラムの科目は、履修生以外にも開かれており、学部・学域教育にもコンセプトの拡大を図っています。また大阪公立大学の大学院では、博士後期課程総合支援パッケージという、経済的にもカリキュラム的にも充実したサポートプログラムを用意していますのでどうぞご活用ください。

学部・学域1年生前期から「初年次ゼミナール」という全学必修科目のゼミを受講していただきます。全学部・学域の教員が担当する200以上の多彩なテーマから、興味のあるテーマを選び、学部・学域の枠を越えて集まった少人数かつ多様な学生と教員によって進めるアクティブラーニング型授業です。多様なメンバーによるグループ討議等を通して、自発的・能動的に学んでいく姿勢とスキルを身につけていただきます。このゼミナールによって、皆さんには総合知の大切さを実感すると同時に、価値観の多様性を体感していただくことができると考えています。文化の多様性は、その交流・革新・創造の源であり、人類に正義・自由・平和をもたらすものであるとの視点に立って、大阪公立大学では専門分野、価値観の多様性とともに、それらを担う学生、教員、職員の多様性、そして国際性やダイバーシティを重んじています。常に新しいものにチャレンジする高い志をもって、互いの価値観を尊重し合いながら、学びを深めていただきたいと思っています。

ここには、多彩な教育カリキュラムに加えて、世界最先端の充実した研究設備、人工光合成研究センターや植物工場研究センターに代表される実証実験研究所、さらには共創研究センターと呼ばれる約50のユニークな学際研究所があります。基礎から応用まで、教員・学生が一丸となって取り組む多様な学術研究は世界中に発信され、学界や産業界とも強い信頼関係で結ばれています。学長である私自身も、長年取り組んできた「全固体電池」という次世代蓄電池の研究を今でも続けています。私も含め、これから皆さんを迎える教員、職員、在学生には熱い思いがあり、皆さんとともに研究できることを心待ちにしています。

また、学問を通じた知的活動だけでなく、学園祭やクラブ活動、ボランティア活動、地域での交流活動なども活発に行われており、企画力、創造力、コミュニケーション力など、あらゆる能力を養うことが出来ます。自分の裁量で自分を磨くことが出来るのが大学です。自由を謳歌できるこの限られた時間に何をなすべきか、大学でしか出来ないことを是非皆さん自身で見つけていただければと思います。新しく始まる皆さんの大学・大学院生活が充実したものになることを心から願っています。

以上をもちまして、新入生の皆さんの今後の飛躍を期待して式辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。