お知らせ
本学学長が令和5年秋の褒章を受章
2023年11月2日
- 受賞
- 学長室
2023年11月2日、令和5年秋の褒章受章者の発表があり、本学学長の辰巳砂 昌弘が紫綬褒章を受章しました。無機材料化学の分野において全固体リチウム電池の開発に寄与するなど、斯学の発展に多大な貢献をした業績が評価され、この度の受章となりました。
紫綬褒章
辰巳砂 昌弘(たつみさご まさひろ)
大阪公立大学長 兼 公立大学法人大阪 副理事長
受章コメント
このたびは紫綬褒章の栄誉に浴し、身に余る光栄であるとともに、心から嬉しく思っております。私は本学の前身大学の一つである大阪府立大学で採用されて以来、40数年にわたり一貫してガラス系イオン伝導体の研究に取り組んで参りました。それが今、40年前は夢物語であった全固体電池の実用化という形で結実しようとしています。研究室での研究成果が評価されたこの受章は、苦楽を共にこれまで一緒に研究に取り組んできた研究室の同僚やスタッフ、そして学生の皆さん、共同研究者や諸先輩方のお力添えによるものです。恵まれた研究環境とともに、これらの多くの方々に心から感謝いたしております。またこの受章を機に、今後社会に少しでも貢献できればと願っています。
略歴
1980年3月 大阪大学 大学院工学研究科博士前期課程修了
1980年4月 大阪府立大学 工学部助手
1984年11月 大阪大学から工学博士の学位授与、その後、講師、助教授を経て
1996年4月 大阪府立大学 工学部教授
2011年4月 大阪府立大学 大学院工学研究科 副研究科長
2015年4月 大阪府立大学 大学院工学研究科長
2019年4月 公立大学法人大阪 副理事長 兼 大阪府立大学長
2022年4月 公立大学法人大阪 副理事長 兼 大阪公立大学長
専門分野:無機材料化学、ガラス科学、固体イオニクス
業績
辰巳砂学長は約40年の長きにわたり、無機材料化学分野の教育・研究に努め、ガラス科学や固体イオニクスの研究領域において優れた業績を挙げました。特に、ガラス系イオン伝導体の研究においては世界的先駆者であり、その研究成果は国内外で高く評価されています。
具体的にはイオン伝導体としてガラス材料の優位性に着目し、様々な無機固体電解質を創出することにより、世界に先駆け多くの業績を挙げました。また、開発した電解質を適用した全固体電池の界面設計指針を確立し、実用化目前の全固体リチウム電池の開発に寄与するなど、斯学の発展に多大な貢献及び顕著な学術的業績を挙げています。その成果は、共著の英文論文647編(内、被引用回数が100回以上の論文は49編)や、特許62件にまとめられており、またこれらの研究業績により、日本セラミックス協会学術賞(2001年) 、日本化学会学術賞(2002年)、文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)(2018年)、日本化学会賞(2019年)などを受賞しています。
また、2013年から10年間にわたって「JST ALCA-SPRINGプロジェクト」内の全固体電池チームのリーダーをつとめ、全固体電池の実用化に向けた材料開発と電池基盤技術の創出に精力的に取り組みました。さらにプロジェクトでの研究成果を「NEDO SOLiD-EVプロジェクト」へ移管することによって、車載用全固体電池の実用化に向けた企業連携を加速することに大きく貢献。これは、JSTとNEDOの研究成果の橋渡しに関する成功事例として高く評価されています。
顕著な研究業績の具体的内容
- 高いイオン伝導度をもつガラスを合成するにあたって、原料融液を急速に冷却する超急冷法や機械的エネルギーで反応を進行させるメカノケミカル法の合成条件を確立し、合成が困難とされていた、リチウムイオンをはじめとする伝導イオン種を高濃度に含む新規なガラス組成系を数多く開拓した。開発した酸化物および硫化物ガラス系材料は標準的な固体電解質として国際的に広く研究に利用されている。これにより、2001年に日本セラミックス協会学術賞などを受賞。
- ガラス組成やプロセス条件を最適化して結晶相転移を制御することによって、高温でのみ安定とされてきた結晶相を室温で安定化できることを実験的に示した。様々な分析手法を駆使して、ガラス中における高温相の安定化メカニズムを明らかにすることによって、銀イオンやリチウムイオンが高速に伝導するガラス系材料を多数見出した。特に後者では実用電池の電解液に匹敵するリチウムイオン伝導度をもつ電解質を発見し、世界的に注目を集めた。これにより、2002年に日本化学会学術賞などを受賞。
- 開発したガラス系電解質を全固体電池へ適用するためには、電極活物質との固体界面形成と保持がキーポイントになることを踏まえて、電解質の塑性変形および弾性変形にかかるパラメーターを決定し、界面適用に向けた電解質の設計指針を確立した。また、無機化学プロセスを基礎とする様々な独創的な界面形成手法を用いて、固体界面抵抗の大幅な低減に成功した。これにより、2019年に日本化学会賞などを受賞。
- 電解液を用いるリチウムイオン電池では適用が困難とされている高容量の電極活物質、例えば硫黄正極やリチウム金属負極を適用した全固体電池を試作し、様々な構造解析手法を駆使して、電池作動時における電極―電解質固体界面の化学的・物理的変化を明らかにした。この成果を基に、高エネルギー密度と長寿命を兼ね備えた全固体電池の実用化への道を拓いた。これにより、2018年に文部科学大臣表彰科学技術賞などを受賞。
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