お知らせ
令和7年 学長による年頭挨拶
2025年1月19日
- 学長室
皆さま、新年、明けましておめでとうございます。
令和7年のお正月、晴天に恵まれた穏やかな三が日でしたが、皆さまはどのようにお過ごしになられたでしょうか。私はここ数年、元旦には、自宅近くの2つの神社に散歩がてら初詣に出かけていますが、今年はコロナ禍以降最大の人出でした。家族で過ごす日本のお正月が完全に戻った印象を持ちました。
昨年は皆さまにとってどのような1年だったでしょうか。能登の大地震から始まり、そこに追い打ちをかける集中豪雨、また猛暑日の記録的な継続など、自然環境に関する諸課題がまたもやあらわになりました。また、ウクライナやガザ地区における戦闘の長期化に象徴される、人間社会が引き起こしている諸課題も顕著になっています。知の拠点を自負する大学人こそが、本来こうした大きな課題に果敢に立ち向かっていきたいものだと常々思っています。
昨年も明るいニュースが少なかった印象が否めませんが、そのような中で、パリで開催されたオリンピック、パラリンピックは、メダルラッシュで私たち日本人を元気づけてくれました。また、いつもと同じ話題で恐縮ですが、MLBの大谷翔平選手は、昨年も私たちを大いに勇気づけてくれました。50-50や3回目のMVPの達成は、これまでの彼の人並み外れた努力の延長上にあるのは明白で、新たにここで述べることはありませんが、昨年の彼が最も素晴らしかったところは、周りを巻き込んでチームをワールドシリーズ制覇に導いたことだと思います。これは、かつてWBCにおいて日本を優勝に導いたときと似ていますが、今回、文化や言語の異なるチームメートとのコミュニケーションを密にして組織内で信頼関係を築いていったことはやはり特別なことと思います。私たちの大学が目指すべき真の国際化は、本来このようなところから始まるべきではないでしょうか。以前、この新年のご挨拶の場で、「知」の拠点を目指し、人材育成を使命とする大学にとっての醍醐味は、知的活動における大谷翔平、つまりノーベル賞クラスの人材を輩出することではないかと思います、と述べたことがありますが、今年はそれに加えて、多様な社会において、周りを巻き込んでリーダーシップを発揮していく国際的な人材を育成していくことの重要性を再認識させてくれました。周りを巻き込むモチベーションが、大谷翔平のように自身の好きなことであり、楽しめることであれば本当にベストだと思います。
さて、学長として、昨年は、一年前の年頭のご挨拶でお話ししましたように、これから大阪公立大学が大きく発展するための種まきの1年と位置づけました。国が定める「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」の12大学の1つに採択されましたので、大学改革の一環として、大阪府市との関係強化、有力企業との実りある産学共創、研究・教育に専念できる大学の環境整備、イノベーションアカデミーすぎもとウイングの充実といったところの種まきをしたいと、ちょうど1年前に申し上げました。イノベーションアカデミー事業を中心に、技術インキュベーション機能と都市シンクタンク機能を発揮していく総合大学が、地域と強く結びついて、そこから世界と繋がってゆくプランは、J-PEAKS採択大学の中でも異彩を放っています。3つのパッケージプロジェクトがすべて採択されたことからも明らかなように、このような大型公立総合大学としての方向性は、国から認められ大いに期待されています。それぞれの種まきはまだ道半ばではありますが、皆さまのご協力・ご支援のもと、今年大きく進めていくことができればと思います。2030年を見据えた「大阪公立大学vision2030」を、若手教員が中心となってバージョンアップし昨年発出しましたが、今年はいよいよそれを具体的に進めるための、法人としての第2期中期計画がスタートします。皆さま一人一人のご協力をどうかよろしくお願いいたします。
さて、年頭に当たり、今年も教職員の皆さまにお願いをさせていただきたく思っています。大阪公立大学の開学以来、新年には毎年3つのことをお願いしてきましたが、まずは皆さまに、この3つを再度お願いしたいと思います。一つ目は「全員広報」、二つ目は「学生ファースト」、三つ目は「個人の研究に注力」の3つです。
一つ目の「全員広報」。大学の名称「大阪公立大学」は、国内の学会等ではかなり浸透してきましたが、一般の方々には関西以外では依然として知名度が高くありません。「Osaka Metropolitan University」も、海外では大阪府立大学、大阪市立大学と比べてあまり知られていないのが現状です。皆さま一人一人に大学名を広めるための広告塔となっていただくことを今年もお願いしたいと思います。国際会議が普通にリアルに開催されるようになりましたので、意識的に大学名をPRしていただければ幸いです。その際、QS世界大学ランキングの評判調査への協力依頼も併せてよろしくお願いいたします。
二つ目の「学生ファースト」。これは私が学長就任以来ずっと言い続けてきたことです。市大・府大の学生の大半はこの3月に卒業していきますが、旧大学の学生が不安なく卒業まで学べることを意識した上で、すべての学生に寄り添って教育・研究を進めていただければと思っています。研究を通した人材育成については産業界にはすでに定評があり、大いに期待されています。学生ファーストで、元気な人材を送り出して下さい。
三つ目の「個人の研究に注力」につきましては、すべての教員の皆さまに、科研費の申請を引き続きお願いしたいと思います。残念ながら今年度の文科省科研費の採択は前年を下回ってしまいました。科研費は個人の自由な発想で研究を進めていくという趣旨から、研究分野を問わず大学に籍をおく研究者として必須と思います。金額の多少は問題ではなく、大学教員の研究の原点であり、まだまだ伸びしろが大きいと思っていますので、どうかチャレンジングな申請をよろしくお願いいたします。
加えてのお願いをさせていただきます。私の学長としての任期が今年の3月までということで、大学改革の種まきをどうしてももう少し進めさせていただきたいところがあります。それは社会科学系大学院の改革です。国の「第6期科学技術・イノベーション基本計画」に「総合知」が掲げられ、人文・社会科学が人々のWell-beingを達成するためのイノベーション創出には必須であることが謳われて久しい状況です。諸外国に比べ、文系学位取得者が日本で極端に少ない現状も言わずもがなのことです。10年以上前から大阪府立大学・大阪市立大学の理系で取り組んできた、大学院のリーディングプログラムには、研究室ローテーションや企業等での長期インターンシップ制度があり、自身の専門外のことを学び、自身の研究に取り入れることは履修学生からの人気が高いだけでなく、学内外から高い評価を得ています。人文・社会科学系大学院の魅力は、Well-beingを目指すすべての研究に対して、総合知を発揮できる専門性であり、完成年度を迎えようとしている今こそが、学生にとってより魅力あるカリキュラムを考えるべきときではないかと思っています。学生ファーストの視点に立って、大学院改革の種まきを是非ともお願いしたいと思います。昨年の部局長連絡会等でお話しした、文部科学省が募集する「未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業」への申請において、本学の社会科学系大学院が中心的役割を果たし、イノベーションアカデミーすぎもとウイングとしても存在感を発揮していただくことを大いに期待しております。
さて、今年秋には、いよいよ森之宮メインキャンパスがオープンします。教職員の皆さまには、まずは引っ越し等でご苦労をおかけすることになりますが、どうぞよろしくお願いいたします。森之宮に向けては、まだまださまざまな課題が残されており、皆さまと共に一つ一つ解決していかなければなりません。大阪公立大学の未来に向けて、イノベーションアカデミー事業のヘッドクオーターとして、ここ大阪城東部地区まちづくりの司令塔となることが期待される森之宮キャンパスは本学の顔になっていくところです。森之宮キャンパスのオープンに先立って開催される「大阪・関西万博」とも合わせて、皆さまのご協力をお願いいたします。地域の皆さまのWell-beingに貢献できる大学だからこそグローバルに通用する、世界で認められる大学だからこそ地域の皆さまにも信頼される、そういった好循環を多様な学生を巻き込んで生み出していく、そういう大学を目指していきたいと思います。そのためには、すべての教職員の皆さまのご協力が不可欠です。一丸となって、新しい大阪公立大学の歴史をつくっていきましょう。
今年の干支は巳。1年前、干支の辰は「辰巳砂」の辰で昨年は自分の年だと申し上げましたが、今年の巳も「辰巳砂」の巳で今年も自分の年と思っていますので、大学の将来に向けての種まきを、今少しお付き合いいただきますようお願いいたします。
今回が私に取りまして学長としての最後の年頭ご挨拶となります。4月からは新しい学長のもと、教職員一丸となって大阪公立大学の一層の発展を期していただくことを願っています。皆さまにとりまして、この一年、希望に満ちた飛躍の年となることを祈念しまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。
学長 辰巳砂 昌弘