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ウイルスをバラバラに!帯電微粒子水が新型コロナウイルスを不活化するメカニズムの一部を明らかに
2022年6月8日
- 獣医学研究科
- プレスリリース
本研究のポイント
◇密閉、静止状態の試験空間においてウイルスに帯電微粒子水※1を曝露し続けることで、ウイルスを覆うエンベロープだけでなくRNAや
タンパク質も破壊することを確認。
◇ウイルスが破壊されることで、宿主細胞の受容体への結合能力が失われることが明らかに。
●本研究成果は、生活空間での使用条件とは異なるもので、製品の性能を評価した実験ではありません。
概要
大阪公立大学大学院 獣医学研究科の安木 真世准教授とパナソニック株式会社 小村 泰浩氏、石上 陽平氏らの研究グループは、活性酸素を含む帯電微粒子水が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を不活化するメカニズムの一部を明らかにしました。
これまでの同グループの研究により、密閉した試験空間内において、活性酸素を含む帯電微粒子水を新型コロナウイルスに曝露するとウイルスを不活化することが明らかとなっていましたが、そのメカニズムは解明されていませんでした。
本研究では、45Lの密閉コンテナにおいて静止状態のウイルスに帯電微粒子水を曝露し、ウイルスの状態を観測したところ、帯電微粒子水に曝露されたウイルスはエンベロープと呼ばれる脂質性の膜が破壊されていることが確認できました。さらに、ウイルスのRNAとタンパク質の量も、帯電微粒子水に曝露されたウイルスは、そうでないウイルスと比べ減少していることから、活性酸素を含む帯電微粒子水が新型コロナウイルスのエンベロープ、RNA、タンパク質を破壊することが分かりました(図1)。また、これらのウイルスを宿主細胞と反応させたところ、帯電微粒子水に曝露されたウイルスは宿主細胞への結合が確認されなかったことから、帯電微粒子水により破壊されたウイルスは宿主細胞の受容体へ結合する能力を失っていることが分かりました(図2)。
本研究成果は、「Journal of Nanoparticle Research」誌に2022年5月3日(火)(日本時間)に掲載されました。
<用語解説>
※1 帯電微粒子水
水に高電圧を印加することで生成される電荷を帯びたナノサイズの水粒子で、活性酸素の一種であるヒドロキシルラジカルを
含む。針状の放電電極と針の先端から距離を置いて設置された板状の対向電極で構成された発生装置で生成される。
安木 真世 准教授
帯電微粒子水はウイルスの特定の分子や構造を標的としているのではなく、ウイルスを構築するエンベロープやタンパク質、RNAと多段階で作用することを世界で初めてつきとめました。新型コロナウイルスの変異株はもちろんのこと、他のエンベロープウイルスへの適用も期待されます。
掲載紙情報
発表雑誌: | Journal of Nanoparticle Research(IF=2.253) |
論 文 名: | Mechanisms underlying inactivation of SARS‑CoV‑2 by nano‑sized electrostatic atomized water particles |
著 者: | Mayo Yasugi, Yasuhiro Komura, Yohei Ishigami |
論文URL: | https://link.springer.com/article/10.1007/s11051-022-05485-5 |
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 獣医学研究科
准教授 安木 真世(やすぎ まよ)
TEL :072-463-5709
MAIL:shishimaru[at]omu.ac.jp [at]の部分を@に変更してください。
取材に関する問い合わせ先
大阪公立大学広報課
担当 :竹内
TEL :06-6605-3411
MAIL:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]の部分を@に変更してください。
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