最新の研究成果
ロペグインターフェロンの作用メカニズムを解明~血液がんはじめ多種のがん治療への応用にも期待~
2022年6月8日
- プレスリリース
- 医学研究科
本研究のポイント
◇ロペグインターフェロンに免疫賦活作用があること、その中でもT細胞を活性化させていることを明らかにした。
◇また、ロペグインターフェロンで治療されたマウスが抗腫瘍免疫記憶を獲得できていることが分かった。
概要
大阪公立大学大学院医学研究科 血液腫瘍制御学の中前博久(なかまえ ひろひさ)准教授、中嶋康博(なかしま やすひろ)講師、酒徳一希(さかとく かずき)病院講師らの研究グループは、白血病マウスモデルを使用した実験において、ロペグインターフェロン※が生体内でがん細胞に作用するメカニズムを明らかにしました。
ロペグインターフェロンが血液がんの治療で有望な結果が出ているとの報告が近年増加しています。しかし、そのメカニズムは明らかではありませんでした。
本研究では、ロペグインターフェロンが腫瘍細胞に対して、直接的な細胞傷害作用をもたらしているのか、もしくは細胞そのものではなく間接的に免疫調整作用をもたらしているのかを検証しました。その結果、優れた抗腫瘍免疫作用を確認し、中でもT細胞の活性化が重要な役割を担っていることが分かりました。これは、幅広いがん種での応用の可能性も示唆しています。加えて、白血病細胞が体内から消失したマウスに再び白血病細胞株を注入しても再発しなかったことから、免疫記憶が獲得され、再発率の低下につながる可能性があると考えられます。
本研究成果は2022年5月3日、国際科学誌「Cancer Science」(IF = 6.716)にオンライン版で発表されました。
※ロペグインターフェロンは、台湾の創薬ベンチャーであるPharmaEssentia Corporationが開発した新規のモノペグ化インターフェロンです。
研究者からのコメント
ロペグインターフェロンの有効性が多数報告されてきた一方で、抗腫瘍メカニズムは明らかではありませんでした。免疫非不全マウスを用いた白血病モデルを駆使することで、ロペグインターフェロンが優れた抗腫瘍免疫応答を誘導し腫瘍を排除すること、さらに免疫記憶を誘導することを明らかにすることができました。
酒徳 一希病院講師
掲載誌情報
雑誌名: |
Cancer Science(IF = 6.716) |
論文名: |
Immunomodulatory and direct activities of ropeginterferon alfa-2b on cancer cells in mouse models of leukemia |
著者: |
Kazuki Sakatoku, Yasuhiro Nakashima, Joji Nagasaki, Mitsutaka Nishimoto, Asao Hirose, Mika Nakamae, Hideo Koh, Masayuki Hino, and Hirohisa Nakamae |
掲載URL: |
研究内容に関する問合せ先
大阪公立大学大学院 医学研究科
担当:病院講師 酒徳 一希
TEL:06-6645-3881
E-mail:k.sakatoku[at]omu.ac.jp
[at]を@に変更してください。
取材に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:上嶋 健太
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
[at]を@に変更してください。
該当するSDGs