最新の研究成果
高精度な細孔を有するナノシートに関する総説論文を発表~高純度ガス回収や有害ガス検知器に使用可能な分離膜やセンシング材料の開発加速に期待~
2022年6月23日
- プレスリリース
- 工学研究科
概要
大阪公立大学大学院 工学研究科 牧浦 理恵准教授は、高精度なナノスケール細孔を有するナノシート材料の簡易作製に関する総説論文を発表しました。
厚さがナノメートル(1000万分の1cm)スケールのシート状のナノ材料は“ナノシート”と呼ばれ、究極に薄い機能材料として、小型化、省資源性の観点から注目を集めています。
一方で、metal-organic framework(MOF)と呼ばれる多孔質物質は、ナノスケールで大きさと形状が高精度に定まった細孔を有し、多量の分子吸着・分離、選択的分子認識などを示すことから、従来の活性炭やシリカゲルよりも高性能な吸着剤となり得るほか、ドラッグデリバリー材料など、広い分野で盛んに研究が進められています。加えて、ガス分離膜やガスセンサへの応用利用が期待される中、ナノシート状のMOFの合成方法の開発が課題でした。
牧浦准教授らの研究グループは、2010年に水面に油膜ができる現象を利用し、原材料溶液を水面に滴下するだけという簡単かつ省エネプロセスでMOFナノシートの作製に世界で初めて成功しました。2010年に発表したMOFナノシート作製に関する論文の被引用件数は現在600件を超え、世界中で注目されています。2017年にはhydrogen-bonded organic framework (HOF)と呼ばれる有機分子だけで構成されるナノシートの作製に成功、2021年に多孔質で電気を流すMOFナノシートの作製にも成功しています。今回発表の総説論文では、牧浦准教授が開発してきたMOFナノシートに加え、これまでに世界中で報告されているMOFナノシートの特徴・比較や、水面でのMOFナノシートの形成過程に関しても詳細に説明されています。これにより、MOFナノシートの分離膜応用やセンサの高機能化、小型化を加速することが期待されます。
本研究成果は、日本時間2022年6月22日(水)に国際学術誌『Coordination Chemistry Reviews』(IF=22.315)へ掲載されました。
工学研究科
牧浦 理恵准教授
2010年にはじめて水面でのMOFナノシート作製に関する論文を発表して以降、この論文の被引用件数は増え続け、国内外で関連の研究論文が多く発表されています。非常に簡便な方法であるが故、誰でもこの手法を使ってMOFナノシートを作製することができますが、形成メカニズムの詳細に触れている報告はほとんどなく、今回の総説論文で、そのようなメカニズムも含めて、MOFナノシート研究を解説しました。論文の査読コメントの中には、「この分野の第一人者として適切な著者であり、読者に有益な総説である」という内容が含まれ、これまで続けてきた研究の重要性を再認識することができました。
掲載誌情報
発表雑誌 | Coordination Chemistry Reviews(IF=22.315) |
論文名 | Creation of metal-organic framework nanosheets by the Langmuir-Blodgett |
著 者 | Rie Makiura |
掲載URL |
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学 大学院工学研究科
准教授 牧浦 理恵
TEL :072-254-9851
MAIL:rie.makiura[at]omu.ac.jp [at]の部分を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当 :上野
TEL :06-6605-3411
MAIL:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]の部分を@に変更してください。
該当するSDGs