最新の研究成果

量子乱流中における量子渦拡散の法則を解明

2022年7月6日

  • プレスリリース
  • 理学研究科

本研究のポイント

◇超流動1状態となった液体ヘリウム4(4He)の量子乱流※2中における量子渦※3の拡散に法則があることを理論および数値計算で解明。
◇短い時間スケールでは素早く広がる“超拡散4、長い時間スケールでは常拡散※5が発生。
◇複雑な量子乱流を理解するための新たな一歩となる可能性を示唆。

概要

大阪公立大学の坪田 誠教授、湯井 悟志特任助教(大学院理学研究科および南部陽一郎物理学研究所所属)、慶應義塾大学法学部日吉物理学教室の小林 宏充教授らの研究グループは、フロリダ州立大学のWei Guo(Associate Professor)、Yuan Tang(Postdoctoral Associate)らと共同で、絶対零度(−273℃)に近い極低温で超流動状態となった液体ヘリウム4(4He)における量子乱流中の量子渦の拡散に法則があることを、理論および数値計算で研究し、Guo准教授らが先行研究で行なった実験結果と比較することで明らかにしました。今回の数値計算では、量子渦は拡散初期においては素早く広がる“超拡散”を起こし、その後の長い時間経過後では、静水中の花粉の動き等でも見られるような“常拡散”を起こします。実験および数値計算で結果が一致したという本研究成果は、複雑な量子乱流を理解するための新たな一歩となる可能性があります。さらに、他の量子系での拡散の研究に繋がることが期待されます。

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 シミュレーションされた量子乱流のスナップショット。

本研究成果は、2022年7月5日、「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。また、当論文は、特に重要な研究成果として認められ、Editors’ Suggestionに選出されました。


<用語解説>
※1 超 流 動  … 粘性が消失した流れのこと。絶対零度に近い極低温において量子力学的性質がマクロに現れることで引き起こされる。
※2 量子乱流 … 超流動の乱流のこと。量子乱流中では量子渦が毛玉のように絡まりあっており、それによってつくられる速度場は複雑に
        乱れている。
※3 量 子 渦  … 超流動中に出現する、渦芯周りの速度循環が量子化された(決まった値しかとれない)渦。超流動ヘリウム4の場合、渦芯
        の太さは0.1 nm程度(原子の大きさと同程度)と非常に細い。
※4 超 拡 散  … Superdiffusionの訳。常拡散よりすばやい拡散。流体中の粒子の変位を r、時間を t と書くと、<r^2> ≈A t^γ のような
        法則に従うことがある。Aは比例定数、<⋯>は統計平均(複数の粒子の変位を集めて平均をとること)を意味する。
        γ=1の場合を“常拡散”、γ>1を“超拡散”と呼ぶ。
※5 常 拡 散  … Normal diffusionの訳。ランダムに運動する粒子等の拡散。

資金情報

本研究はJSPS特別研究員奨励費(JP19J00967)JSPS科研費(JP20H01855, JP22H01403)の助成を受けたものです。

掲載誌情報

発表雑誌 Physical Review Letters
論文名 Universal anomalous diffusion of quantized vortices in ultraquantum turbulence
著 者 Satoshi Yui, Yuan Tang, Wei Guo, Hiromichi Kobayashi, and Makoto Tsubota
掲載URL https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.129.025301




プレスリリース全文 (732.5KB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
教授:坪田 誠(つぼた まこと)
E-mail:tsubota[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:國田
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

該当するSDGs

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