最新の研究成果
Why Y matters? 加齢によるY染色体喪失が心不全の悪化につながることが明らかに
2022年7月15日
- プレスリリース
- 医学研究科
本研究のポイント
◇血液の後天的Y染色体喪失(mLOY)と心不全の因果性を証明。
◇mLOYモデルマウスでは臓器の線維化が悪化。
◇線維化の原因はY染色体のない心臓マクロファージの機能異常。
・男女の寿命差にも関連している可能性
概要
ヒトの性染色体にはXとYがあり、男性の組み合わせはXY、女性はXXです。一部の男性では、加齢にともない血液細胞からY染色体が失われることが知られています(Loss of Y chromosome: mLOY)。それらの男性は、Y染色体を失っていない男性に比べて、アルツハイマー病や固形がんになりやすく、さらに寿命も短いことが報告されていました。しかし、mLOYと疾患との因果性は分かっていませんでした。
今回、大阪公立大学大学院医学研究科 循環器内科学の佐野 宗一特任講師、ウプサラ大学、バージニア大学の研究者らによる共同研究グループは、UKバイオバンク参加者のデータを解析し、mLOYの男性では心不全を含む様々な心血管病の予後が悪いことを新たに見出しました。さらに、マウスを用いた基礎的な研究によって、mLOYではY染色体のない心臓マクロファージが出現することが原因となって、心臓の線維化が悪化することが分かりました。
本研究成果は国際学術誌Scienceの2022年7月15日号にて公開されました。
研究者からのコメント
私たちの体は変異した細胞で溢れかえっており、「血液細胞のmLOY」はその一例です。この度はmLOYと加齢性疾患の因果性を世界に先駆けて示すことができました。この知見を新たな治療法の開発につなげたいと思います。
佐野 宗一特任講師
掲載誌情報
雑誌名: |
Science |
論文名: |
Hematopoietic Loss of Y Chromosome Leads to Cardiac Fibrosis and Heart Failure Mortality |
著者: |
Sano S*, Horitani K, Ogawa H, Halvardson J, Chavkin NW, Wang Y, Sano M, Mattison J, Hata A, Danielsson M, Miura-Yura E, Zaghlool A, Evans MA, Fall T, De Hoyos HN, Sundstöm J, Yura Y, Kour A, Arai Y, Thel MC, Arai Y, Mychaleckyj JC, Hirschi KK, Forsberg LA*, Walsh K*. (*corresponding authors) |
掲載URL: |
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abn3100 |
研究内容に関する問合せ先
大阪公立大学大学院医学研究科循環器内科学
担当:佐野 宗一
TEL:06-6645-3801
E-mail:sano.soichi[at]omu.ac.jp
soichisano9[at]gmail.com
[at]を@に変更してください。
取材に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:上嶋 健太
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
[at]を@に変更してください。
該当するSDGs