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光の力でナノ粒子を自在に選別 ~新原理のクロマトグラフィーで半導体ナノ粒子の自在な選別に成功~

2022年7月22日

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  • 理学研究科

本研究のポイント

・薄層クロマトグラフ基板(TLC)に、局在表面プラズモン共鳴(LSPR1を示す金ナノ粒子を担持することで、従来にはない原理で働く新規クロマトグラフィー法「プラズモンTLC法」を開発した。

・プラズモンTLC上で、溶媒とともに半導体ナノ粒子(量子ドット)2を移動させると、光照射したときにのみに、担持したAuナノ粒子に光圧3が発生し、量子ドットの移動速度が変化した。

・照射する光の波長と強度を適切に選ぶことで、光捕捉されるナノ粒子のサイズや光学的な特性を自在に選別することに成功した。

・本技術を採用すれば、太陽電池材料・発光材料としての利用が期待される低毒性量子ドットの自在な選別や、タンパク質やリポソームなどの生体分子の光捕捉・サイズ選別のための全く新しい分離手法/精製手法として期待できる。

概要

国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院工学研究科の鳥本 司 教授、亀山 達矢 准教授、秋吉 一孝 特任助教らの研究グループは、大阪大学大学院基礎工学研究科の石原 一 教授、山根 秀勝(研究当時、大阪府立大学工学研究科 助教)、大阪公立大学大学院理学研究科の坪井 泰之 教授(研究当時、大阪市立大学大学院理学研究科)、東海林 竜也(研究当時、大阪市立大学大学院理学研究科 講師)との共同研究で、分子の分離によく利用される薄層クロマトグラフィー(TLC4と、金ナノ粒子に光照射することにより発生する力(光圧)を組合せ、光によるナノ粒子の新たな分離・選別法である「プラズモンTLC法」の開発に世界で初めて成功しました。本研究成果である「プラズモンTLC法」では、照射する光の波長と強度を適切に選ぶことで、光捕捉されるナノ粒子のサイズと光学特性を選別することができました。本手法は、困難だった低毒性量子ドットの効率的で高精度な分離に応用でき、今後の光デバイス開発への量子ドットの利用を飛躍的に促進させる技術になると期待できます。

本研究成果は、2022722日午前9時(日本時間)付イギリス科学誌「NPG Asia Materials」に掲載されました。

用語解説

注1)局在表面プラズモン共鳴(LSPR)
ある波長の光が金属ナノ粒子にあたると、光の電場によって金属中の自由電子が集団振動する。これを局在表面プラズモン共鳴(LSPR)という。このとき、振動している電子の電荷によって、金属ナノ粒子近傍に強い局所電場が生じる。

注2)半導体ナノ粒子(量子ドット)
量子サイズ効果を示す半導体ナノ粒子のこと。10 nm以下の半導体粒子では、粒子中の電子および正孔がナノ空間に強く閉じ込められるためにエネルギーが増加するという量子サイズ効果が発現し、エネルギーギャップなどの物理化学特性が粒子サイズに依存して変化する。これらの半導体ナノ粒子は強く発光するために、LEDやディスプレイなどの発光デバイスへの応用が試みられている。また粒子サイズによって電子エネルギー構造が変化するために、次世代太陽電池の光吸収層としての開発が進められている。現在は、CdSCdSePbSなどの二元量子ドットを用いる研究が盛んであるが、高毒性元素を含むために、広範囲な応用が望めない。これに対して、高毒性元素を含まない三元素以上からなる多元量子ドットの開発が進められており、サイズの単分散化と組成の均質化によって特性の高性能化が達成できれば、非常に広範囲なデバイス応用が期待されている。

注3)光圧
物質に光があたると光は運動量を持つために物質に力が働く。また光電場の勾配があるときにも、光電場とそれにより物質に誘起される分極間の相互作用のため物質に力が働く。これらを光圧と呼ぶ。金ナノ粒子などのLSPRを光励起することで形成される局所電場においても物質に力が働くが、その力も光圧の一種である。

注4)薄層クロマトグラフィー(TLC)
化学物質を分離するクロマトグラフィーの一種である。シリカゲルなどの担体粒子をガラス基板などに担持したTLCプレートを用いる。対象とする化学物質をTLCプレートに担持し、溶媒を浸透させることで分子を担体粒子膜中で移動させると、担体粒子との親和性の差によって対象分子の移動距離が変化する。この現象を利用する分離法である。TLC上の対象分子の移動距離の指標として、保持係数(Rf値)を用いる。Rf値は、TLCプレート上の溶媒の移動距離に対する対象物質の移動距離の比として定義される。

掲載誌情報

【発表雑誌】NPG Asia Materials
【論 文 名】Development of Plasmonic Thin-layer Chromatography for Size-selective and Optical-property-dependent Separation of Quantum Dots
【著  者】T. Torimoto, N. Yamaguchi, Y. Maeda, K. Akiyoshi, T. Kameyama, T. Nagai, T. Shoji, H. Yamane, H. Ishihara, and Y. Tsuboi
DOI10.1038/s41427-022-00414-3

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研究内容に関する問合せ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
教授 坪井 泰之(つぼい やすゆき)
E-mail:twoboys[at]omu.ac.jp
[at]を@に変更してください。

取材に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
[at]を@に変更してください。

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