最新の研究成果
難治性疾患「原因不明消化管出血」の 長期累積再出血率は41.7%と高いことが明らかに
2022年8月2日
- プレスリリース
- 医学研究科
本研究のポイント
◇原因不明消化管出血※1におけるカプセル内視鏡検査後5年間の累積再出血率は、41.7%と高いことが明らかに。
◇原因不明消化管出血に対する初回小腸精査としてCEを施行された389名を対象に、5年間経過追跡を行った臨床研究。
◇肝硬変や抗凝固薬内服中の人、以前大量出血を起こしたことのある人では、特に注意深い経過観察が必要。
概要
大阪公立大学大学院医学研究科 消化器内科学の大谷 恒史講師、十三市民病院消化器内科の島田 直医長、大阪公立大学大学院医学研究科 先端予防医療学の渡邉 俊雄教授らの研究グループは、難治性疾患である原因不明消化管出血(OGIB)に対するカプセル内視鏡(CE)※2検査後の長期累積再出血率について明らかにしました(図1)。
本研究は、2004年3月から2015年12月までに、OGIBに対する初回小腸精査としてCEを施行された389名を対象に行った臨床研究です。この結果、CE後5年間の累積再出血率は41.7%と高く、肝硬変や抗凝固薬内服中の人や、以前大量出血を起こしたことのある人では特に注意深い経過観察を要することが明らかになりました。
図1:概要図
本研究は、CE後のOGIBの長期経過観察のあり方を考える上での重要な知見であり、今後のOGIBの診療指針に寄与するものと考えます。
本研究成果の詳細は、2022年7月15日(金)に、国際学術誌『Gastrointestinal Endoscopy』( I F=10.396)オンライン速報版に掲載されました。
原因不明消化管出血は難治性疾患ですが、カプセル内視鏡を用いて適切に診断を行い、治療介入につなげることができれば、再出血のリスクを下げることができます。またカプセル内視鏡にて病変が検出されなかった場合でも、十分な経過観察が必要です。(大谷 恒史)
大阪公立大学はカプセル内視鏡を黎明期から臨床活用し、世界的にも有数の臨床データを蓄積しています。この研究で原因不明消化管出血の高い再出血率が判明したと同時に、再出血予測因子・治療介入の効果もはっきりしました。今後よりよい医療に繋げられると大いに期待できます。(島田 直)
大阪公立大学
消化器内科学
講師:大谷 恒史
十三市民病院
消化器内科
島田 直
【補足情報】
※1 原因不明消化管出血 (OGIB):本邦では、2010年に上部消化管内視鏡検査や下部消化管内視鏡検査を行っても出血源が不明である消化管出血と定義されました。
※2 カプセル内視鏡(CE):口から飲み込み、消化管を通過しながら小腸の内部を撮影することができる、長さ26 mm×幅11 mmの小型の内視鏡です。他の内視鏡検査と比べて苦痛が少なく、検査中はほぼ普段通り日常生活を送ることができます。
掲載紙情報
雑 誌 名: |
Gastrointestinal Endoscopy (GIE)(IF=10.396) |
論 文 名: | Long-term rebleeding rate and predictive factors of rebleeding after capsule endoscopy in patients with obscure gastrointestinal bleeding |
著 者: | Koji Otani1, Sunao Shimada2, Toshio Watanabe3, Yuji Nadatani3, Akira Higashimori1, Masaki Ominami1, Shusei Fukunaga1, Shuhei Hosomi1, Noriko Kamata1, Fumio Tanaka1, Yasuaki Nagami1, Koichi Taira1, Yasuhiro Fujiwara1 (Koji Otani and Sunao Shimada share co-first authorship) 1 大阪公立大学大学院医学研究科 消化器内科学 2 大阪市立十三市民病院 消化器内科 3 大阪公立大学大学院医学研究科 先端予防医療学 |
掲載URL: | https://doi.org/10.1016/j.gie.2022.07.012 |
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科 消化器内科学
担当:大谷 恒史
TEL:06-6645-3811
E-mail:kojiotani[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:久保 文
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください
該当するSDGs