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カンジダ症の新たな抗真菌薬開発へ 抗生物質トヨカマイシンの作用メカニズムを解明!

2022年8月4日

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  • 工学研究科

本研究のポイント

◇病原性酵母Candida albicansでは、濃縮ヌクレオシド輸送体CNT※1によって、核酸系抗生物質トヨカマイシンが細胞内に取り込まれる
 ことを初めて解明。
◇ヒトのCNT(hCNT※2)も細胞内にトヨカマイシンを取り込む機能を持つことを発見。
C. albicansとヒトのCNTでは、核酸系抗生物質の種類によってそれらの取り込み量が異なることを発見。

概要

大阪公立大学大学院 工学研究科 物質化学生命系専攻の尾島 由紘准教授、東 雅之教授らの研究グループは、病原性酵母Candida albicans※3において、濃縮ヌクレオシド輸送体CNTによって核酸系抗生物質トヨカマイシン※4が細胞内に取り込まれることを初めて解明しました。また、ヒトのCNT(hCNT)も細胞内にトヨカマイシンを取り込む機能を持つことや、C. albicansのCNTとhCNTでは、核酸系抗生物質の種類によってそれらを取り込める量が異なることを発見しました。

トヨカマイシンは、カンジダ症の原因となる病原性酵母C. albicansに対して効果があり、パン酵母などの他の酵母には無害であることが知られています。しかし、ヒトにも毒性があるため、治療薬としての臨床応用はされていませんでした。

本研究では、パン酵母が濃縮ヌクレオシド輸送体であるCNTを持たないことに着目し、CNTを欠損させたC. albicansに対するトヨカマイシンの効果を検証したところ、CNTを欠損させるとトヨカマイシンが効かなくなることが分かりました(図1)。これにより、トヨカマイシンはCNTによって細胞内に取り込まれていることを証明しました。

さらに、遺伝子組換えによりパン酵母にC. albicansのCNTとhCNTを導入し、それらにトヨカマイシンや構造の似た核酸系抗生物質を与えたところ、物質の種類によってそれらを取り込める量が異なることから、作用効果の順番も異なることを発見しました。

このような結果から、C. albicansにだけ効果がありヒトには無害である新しい抗真菌薬の開発につながるものと期待されます。

図1

   図1 異なる濃度のトヨカマイシンを添加したC. albicans
     の親株とCNT欠損株の細胞増殖の違い

本研究成果は、米国微生物学会が刊行する国際学術誌 「Microbiology Spectrum」に8月1日(日本時間)に掲載されました。


<用語解説>
※1 CNT … 濃縮ヌクレオシド輸送体。13回膜貫通タンパク質であり、アデノシン、ウリジン、イノシン、グアノシンなどを輸送する。
※2 hCNT … ヒトの濃縮ヌクレオシド輸送体。
※3 Candida albicans … カンジダ症を引き起こす日和見感染菌であり、菌糸状と酵母状の形態をとる二形成酵母である。
            深部臓器や組織に侵襲することで生じる深在性カンジダ症は重症化すると死亡率が高く、有効な抗真菌薬が
            限られていることから多くの死者を出している。
※4 トヨカマイシン … 1950年代に発見された核酸系抗生物質。細菌では結核菌、真菌ではカンジダ属の一部に選択的に作用する。
           ヒトに対しても毒性があるため、感染症の治療薬としては用いられていない。


カンジダ菌などの病原性真核微生物に有効な抗真菌薬は、抗細菌薬に比べ開発が難しく、特に臓器の深部に感染する深在性真菌症は重篤な症状を引き起こしますが、治療に使用できる薬剤は4系統で10種類程度しかありません。今回の発見は、これまでにない作用を持つ新たな系統の抗真菌薬の開発につながることが期待できます。

東教授、

東教授(左)、尾島准教授(右)

掲載誌情報

発表雑誌 Microbiology Spectrum(IF=7.171)
論文名 Concentrative nucleoside transporter, CNT, results in selective toxicity of toyocamycin against Candida albicans.
著 者 Yoshihiro Ojima, Naoki Yokota, Yuki Tanibata, Shinsuke Nerome, Masayuki Azuma
掲載URL https://doi.org/10.1128/spectrum.01138-22 


プレスリリース全文 (552.6KB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 工学研究科
教授 東 雅之(あずま まさゆき)
准教授 尾島 由紘(おじま よしひろ)
TEL:06-6605-3092
E-mail:azuma[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

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