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新たな治療法に光 副甲状腺ホルモンと腱組織で正常半月板を再現 ~半月板再建手術の治療成績向上に期待~

2022年8月9日

  • プレスリリース
  • 医学研究科

本研究のポイント

◇骨粗鬆症治療薬としてすでに広く臨床利用されている副甲状腺ホルモン(PTH)※1に着目。
◇ラットの組織と遺伝子レベルで軟骨形成を確認。

概要

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大阪公立大学大学院医学研究科 整形外科学の西野 壱哉大学院生、橋本 祐介講師、中村 博亮教授らの研究グループは、腱組織にPTHを注入して半月板切除部位へ移植することで、正常な半月板に近い軟骨のような組織が再現できることを明らかにしました。本研究成果は、患者自身の腱を移植する半月板再建手術の治療成績向上につながることが期待されます。

膝半月板はスポーツ外傷や加齢的変化によって損傷しますが、自然治癒の見込みは少なく、場合によっては手術が必要です。手術法としては縫合術と切除術があり、切除術では膝の軟骨の損傷が進むため、日本国内では患者自身の腱を移植する半月板再建縫合手術も行われています。しかし、患者自身の腱と半月板は組織が異なるため、治療成績は安定していないのが現状です。

本研究グループは、ラットのアキレス腱より採取した腱細胞にPTHを投与した群では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を腱細胞に注入した群に比べて再建した半月板での被覆率が高く、関節軟骨の保護作用も高いことを動物実験で明らかにしました。また、半月板組織のトルイジンブルー染色ではPTH注入腱で異染性を認め、正常半月板に近い組織像を認めました(右図参照)。そして、ラットの内側半月板を部分切除し、PTHを注入したラットのアキレス腱を半月板欠損部に縫合して軟骨化を評価したところ、4週間後に軟骨形成に関与する遺伝子の発現上昇を認めました。

以上の結果から、腱細胞あるいは腱内の未分化間葉系細胞に対してPTHが作用し、軟骨分化を維持させることにより、半月板様組織が再生する可能性が示唆されました。

本研究成果は、202281日に国際学術誌「The American Journal of Sports Medicine」(IF = 7.010)オンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

本研究から、骨粗鬆症治療薬として知られる副甲状腺ホルモンを腱に投与することで、骨化せずに腱の軟骨化を誘導するという非常に新規性の高い発見が得られました。これにより、半月板再建術の治療成績が向上し、若くして半月板を切除されてしまった患者さんの膝関節軟骨を保護することができればと願っています。

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西野 壱哉大学院生

掲載誌情報

雑誌名:

The American Journal of Sports Medicine(IF=7.010

論文名:

Transplantation of parathyroid hormone-treated Achilles tendon promotes meniscus regeneration in a rat meniscal defect model

著者:

Kazuya Nishino, Yusuke Hashimoto, Yohei Nishida, Kumi Orita, Junsei Takigami, Hiroaki Nakamura

掲載URL

https://doi.org/10.1177/03635465221112954

プレスリリース全文 (429.4KB)

研究内容に関する問合せ先

大阪公立大学 大学院 整形外科学
担当:橋本 祐介
TEL:06-6645-3851
E-mail:hussyyomu[at]omu.ac.jp
[at]を@に変更してください。

取材に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:上嶋 健太
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
[at]を@に変更してください。

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