最新の研究成果
新型コロナウイルス感染者数と人流の関係を明らかにー効果的な人流抑制を示唆ー
2022年9月5日
- プレスリリース
- 生活科学研究科
本研究のポイント
◇感染者数と、日常生活における移動距離との関係性は弱い
◇感染者数と、公共交通機関における人流との関係性は弱い
◇感染者数を増やさないためには、食料品店・薬局の人流を抑制することが重要
概要
大阪公立大学 生活科学研究科 居住環境学分野の加登 遼助教と瀧澤 重志教授の研究グループは、新型コロナウイルス感染症との共存を目指す社会では、一律に人の移動を抑制するのではなく、感染状況に応じて特定の場所での人流のみを制御すれば、感染者数の減少に効果がある可能性を見出しました。
本研究(論文[1])では、大阪府茨木市を事例として、2020年4月から2021年7月の期間における、日々の移動距離※1と、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数との関係性を分析しました。その結果、移動距離は感染者数と関係性が弱く、移動距離以外の他要因が感染者数と関係する可能性が示唆されました。
本研究成果は、2022 年9月1日に国際学術誌「PLoS ONE」に掲載されました。
次の研究(論文[2])では、大阪府・京都府・兵庫県を対象として、2020年3月から2021年9月の期間における、各場所での人流※2の相対的変化と、新型コロナウイルス感染症の2週間の合計感染者数※3との関係性を分析しました。その結果、食料品店・薬局および公園での人流と感染者数の関係性は強く、公共交通機関と感染者数の関係性は弱いことが明らかとなりました。食料品店はあらゆる世代が利用し社会的な接点も多い施設のため、人流が増えすぎないように制御することが重要と考えられます。
本研究成果は、2022 年8月2日に国際学術誌「npj Urban Sustainability」に掲載されました。
<用語解説>
※1 スマートフォンの位置情報履歴ビッグデータ(Agoop社ポイント型流動人口データ)を使用。
※2 Google社のCOVID-19:コミュニティ モビリティ レポートのデータを使用。
※3感染者数は、厚生労働省が公表する新規陽性者数の推移(日別)のデータを使用。
これらの研究成果は、新型コロナウイルス感染症対策を行いながら、社会・経済活動を維持することを可能にするものであり、重要な結論です。さらに、新型コロナウイルス感染症との共存を目指すポスト・パンデミックに向けて、公共交通機関を利用して、自動車を使わずに生活できるウォーカブルなまちづくり(歩きやすい街づくり)の必要性も示唆しています。
加登 遼 助教
資金情報
本研究は、科研費:若手研究(21K14318)および第一生命財団:都市とくらしの分野(2022年度奨励研究)の対象研究です。
掲載紙情報
論文1
発表雑誌: | PLoS ONE |
論 文 名: | Time series cross-correlation between home range and number of infected people during the medium term of COVID-19 Pandemic in a suburban city |
著 者: | Haruka Kato, and Atsushi Takizawa |
掲載URL: | https://doi.org/10.1371/journal.pone.0267335 |
論文2
発表雑誌: | npj Urban Sustainability |
論 文 名: | Human Mobility and Infection from Covid-19 in the Osaka Metropolitan Area |
著 者: | Haruka Kato, and Atsushi Takizawa |
掲載URL: | https://doi.org/10.1038/s42949-022-00066-w |
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 生活科学研究科
助教 加登 遼(かとう はるか)
E-mail:haruka-kato[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
担当:久保 文
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください
該当するSDGs