最新の研究成果
全固体ナトリウム電池の新たな正極材料を開発 ~二次電池市場を支えるより安価で高性能な全固体電池の実現へ~
2022年9月20日
- プレスリリース
- 工学研究科
ポイント
◇安価で手に入りやすい元素から構成される新しい正極材料を開発
◇高容量かつ、300サイクル以上の間、充放電が可能
◇資源状況に左右されない安価かつ高性能な全固体ナトリウム電池材料としての実用化が期待
概要
大阪公立大学大学院 工学研究科の奈須 滉大学院生(大阪府立大学大学院 博士後期課程3年)、作田 敦准教授、辰巳砂 昌弘学長、林 晃敏教授らの研究グループは、東京大学、早稲田大学との共同研究により、安価で豊富な資源量を持つ元素を用いて、高い容量と可逆性をもつ全固体ナトリウム電池の正極材料Na2FeS2の開発に成功しました。
カーボンニュートラルな社会の実現に向け、リチウムイオン電池をはじめとする二次電池の需要が高まっています。拡大する需要に対応するためには、リチウムイオン電池よりも元素戦力的に有利なナトリウムイオン電池が注目を集めており、より安価で高性能な材料の開発が必要とされています。
図1 Na2FeS2の結晶構造
本研究では、全固体ナトリウム電池の正極構成材料を安価にするため、安価で手に入りやすいナトリウム(Na)、鉄(Fe)、硫黄(S)のみから構成される新たな正極材料Na2FeS2(図1)の開発に成功しました。また、本研究で開発した正極材料を用いた全固体ナトリウム電池は、理論容量※1に相当する高容量を示し、300サイクル以上の間充放電が可能であることを確認しました。
今回開発した正極材料は、資源の枯渇や輸出入制限等の資源状況に左右されない、豊富かつ安価な元素のみを用いているため、より安価で高性能な全固体ナトリウム電池の材料としての実用化が期待されます。
本研究成果は、Wiley社が刊行する国際学術誌「Small」に、2022年9月19日にオンライン掲載されました。
<用語解説>
※1 理論容量…化学組成から期待できる容量。ここでは、Na2FeS2が有するすべてのNaが充放電容量に寄与することを想定する
容量を指す。
全固体ナトリウム電池を元素戦略的に有利な電池とするためには、ナトリウム以外の構成元素も安価で資源量が豊富である必要があります。
今回開発したのは、ナトリウム、鉄、硫黄のみからなる安価、高容量、長寿命を兼ね備えた正極材料です。正極にナトリウムを含むため、負極に炭素などのナトリウムを含まない幅広い材料を用いることもできます。安価かつ高性能な全固体ナトリウム電池の実現に一歩近づく成果になることを期待しています。
作田准教授(左)、林教授(右)
資金情報
本研究は、科学研究費補助金(18H05255、20K05688、20J23722、21H04701)および文部科学省科学研究費助成事業「新学術領域」蓄電固体界面科学(19H05812)の支援を受けて行われました。
掲載紙情報
発表雑誌: | Small(IF=15.153) |
論 文 名: | Iron sulfide Na2FeS2 as Positive Electrode Material with High Capacity and Reversibility Derived from Anion–Cation Redox in All-Solid-State Sodium Batteries |
著 者: | Akira Nasu, Atsushi Sakuda, Takuya Kimura, Minako Deguchi, Akihisa Tsuchimoto, Masashi Okubo, Atsuo Yamada, Masahiro Tatsumisago, Akitoshi Hayashi |
掲載URL: | https://doi.org/10.1002/smll.202203383 |
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 工学研究科
准教授 作田 敦(さくだ あつし)
TEL:072-254-9334
E-mail:saku[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください
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