最新の研究成果

応答温度の制御が可能!これまでとは一線を画すイオンを用いたポリマーの設計に成功

2022年9月22日

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  • 工学研究科

本研究のポイント

◇高分子(ポリマー1)と水溶媒にイオンを加えることで温度応答性2を発現させることに成功
◇加えるイオンの種類を変えることで、反応温度を制御できることを発見
◇イオンのセンシング技術やドラッグデリバリーシステム(DDS)などへの応用が期待


 ※1 ポリマー…単量体(モノマー)が化学結合で連結した分子のこと
 ※2 温度応答性…外部の温度変化に応答する性質のこと

概要

大阪公立大学大学院 工学研究科 物質化学生命系専攻の原田 敦史教授、北山 雄己哉特別助教、江本 隼也大学院生(大阪府立大学大学院 博士前期課程2年)らの研究グループは、高分子(ポリマー)と水溶媒にイオンを加えることで温度応答性を発現させることに成功しました。また、加えるイオンの種類によって反応温度を制御できることを発見しました。

ある温度を境に物理的な特性が変化する高分子(温度応答性ポリマー)は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)や細胞培養などの材料として使用されています。通常、温度応答性ポリマーの設計では、ポリマーと溶媒の間の相互作用によって温度応答性を発現させていましたが、近年、第3の成分を加えることで温度応答性を発現させる手法が注目を集めています。現在、この手法では有機溶媒を用いることが多く、DDSなど人に用いる材料を開発するためには、人体に無害な水を溶媒に用いる必要があります。

そこで、本研究グループでは溶媒に水を用い、ポリマーと水溶媒に2価の陽イオンであるアルカリ土類金属イオンを加えることで、温度応答性を発現させることに成功しました。また、従来はポリマーの構造を変化させ反応温度を制御していましたが、加えるイオンの種類を変えることで、反応温度を制御することに成功しました。

これらの成果は溶媒中のイオンの種類を判別するセンシング技術やDDSの材料への応用などが期待されます。

本研究成果は、米国化学会が刊行する国際学術誌「Macromolecules」に、2022年7月28日にオンライン速報版として掲載されました。

 


温度応答性高分子は、外部温度によって性質を変化させる機能性高分子の一種ですが、私たちは特定のイオンが存在する場合にのみ温度応答性を発現するユニークな高分子を開発しました。イオンの種類や複数のイオンの混合比を変更することで、応答温度を制御できるので、これまでの温度応答性高分子とは一線を画す高分子として期待しています。

工学研究科 原田 教授

原田 敦史 教授

資金情報等

本研究の一部は、文部科学省 卓越研究員事業からの支援を受けて行われました。

掲載紙情報

発表雑誌: Macromolecules(IF=5.985)
論 文 名: Thermoresponsiveness of Carboxylated Polyallylamines Induced by Divalent Counterions as Ionic Effectors
著     者: Junya Emoto, Yukiya Kitayama, Atsushi Harada
掲載URL: https://doi.org/10.1021/acs.macromol.2c00795


プレスリリース全文 (451.1KB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 工学研究科
教授 原田 敦史(はらだ あつし)
TEL:072-254-9328
E-mail:atsushi_harada[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

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