最新の研究成果
~メスバウアー分光法によるに新たな発見~ 単斜輝石の鉄イオンのメスバウアーピーク比は鉄の量ではなくカルシウムの量に依存!
2022年10月18日
- プレスリリース
- 理学研究科
- 研究推進機構
ポイント
◇メスバウアー分光法を用いて単斜輝石の鉄イオンの状態を調査。
◇単斜輝石の結晶におけるM1席を占める鉄イオンのメスバウアーピーク比を表す値は、鉄の含有量とは無関係に一定で、カルシウム固溶量によって変化することが明らかに。
概要
輝石は化学組成が(Ca, Mg, Fe)SiO3と表現されるように、カルシウム・マグネシウム・鉄などを含む主要珪酸塩鉱物で、多くの岩石に含まれています。その物性を明らかにすることは、輝石の高い存在量から、岩石鉱物研究において大きな意義があると考えられています。また、鉱物の構成原子が各々どのような状態であるかを調べることは、その物質を理解するためには必要不可欠です。中でも岩石鉱物に普遍的に存在する鉄の価数(Fe2+とFe3+)とその量比は、鉱物生成時の地下での環境や、鉱物生成後の地表での履歴を知るという理由で、極めて重要な情報です。
大阪公立大学大学院 理学研究科の篠田 圭司教授らの研究グループは、カルシウムを豊富に含む輝石の一種、単斜輝石の鉄イオンの状態を、薄片結晶を使ったメスバウアー分光法を用いて調べました。研究の結果、カルシウム含有量が50%程度の単斜輝石の結晶においては、M1席というポジションにある鉄イオンのメスバウアーピーク比を決めるテンソル値(3×3の行列で表される物性値)が、鉄の含有量とは無関係に一定で、カルシウム固溶量によって変化することが明らかになりました。
本研究成果により、主要造岩鉱物である単斜輝石の物性の一つが明らかになりました。今後、鉱物薄片を用いたメスバウアー分光法によって、鉄の詳しい分析が進むと期待できます。
本研究成果は、2022年10月18日、「Journal of Mineralogical and Petrological Science」にオンライン掲載されました。
研究を始める前は、鉄の固溶成分が変われば、メスバウアーピーク比を決めるテンソル成分も変化すると予想していました。しかし、実際は鉄ではなくカルシウムの量に依存してテンソル成分は変化するという結果が意外でした。
篠田 圭司教授
掲載紙情報
発表雑誌: | Journal of Mineralogical and Petrological Science |
論 文 名: | Compositional dependence of intensity and electric field gradient tensors for Fe2+ at the M1 site in Ca-rich pyroxene by single crystal Mössbauer spectroscopy |
著 者: | Daiki Fukuyama, Keiji SHINODA, Daigo Takagi, Yasuhiro Kobayashi |
掲載URL: | https://doi.org/10.2465/jmps.220506 |
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 理学研究科
教授:篠田 圭司(しのだ けいじ)
TEL:06-6605-3173
E-mail:shinodakeiji[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください
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