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7年にわたる熱帯季節林モニタリングの成果! エルニーニョ現象が実生(みしょう)にダメージ

2022年10月24日

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  • 研究推進機構

ポイント

◇過去に類を見ない長期間かつ詳細な「木の種子からの芽生え(実生(みしょう)」に関する調査
◇乾燥に強い熱帯季節林でもエルニーニョ現象により実生死亡率が上昇
◇落葉樹林より常緑樹林で長期乾燥による芽生えに大きな影響
◇異常気象・気候変動下での次世代森林保全に向けての新たな視点を提供

概要

大阪公立大学大学院 理学研究科の伊東 明教授、Prapawadee Nutiprapun(プラパワデ ヌティプラパン)大学院生(大阪市立大学大学院 理学研究科 後期博士課程3年)らの研究チームは、タイ北部チェンマイにある国立公園の一画で、熱帯季節林に生息する樹木の実生(種子からの芽生え)を7年間モニタリングし、データを収集しました。

調査期間中、過去最大規模のエルニーニョ現象が発生し、平年に比べて強く長い乾燥が起きました。熱帯季節林は、毎年乾季を迎えるため乾燥耐性があると考えられていますが、あまりにも強く長い乾燥が起きると実生の死亡率は高くなることが明らかになりました。

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また、標高が低く乾燥がより厳しい落葉樹林より、標高が高く乾燥が弱い常緑樹林の方が、乾燥耐性の低い種が多いため死亡率が高くなることも分かりました。

本研究成果により、エルニーニョ現象が及ぼす熱帯季節林での実生への影響が明らかになりました。長期的には成熟した樹木への影響も考えられ、さまざまな異常気象、気候変動から熱帯林生態系を保全すべく、さらに多くの場所で長期観察データを蓄積する必要があります。

本研究成果は、2022年10月24日「Global Change Biology」にオンライン掲載されました。



多くの実生を7年間見続けることで地球規模の気象現象であるエルニーニョが熱帯林に与える影響を評価できました。第1著者で大学院生のNutiprapunさんとタイの研究者の長期にわたる地道な努力の成果です。これからも熱帯林研究における長期モニタリングの必要性と重要性を発信して行きたいと思います。

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   伊東教授       P. Nutiprapun大学院生

掲載紙情報

発表雑誌: Global Change Biology
論 文 名: Effects of El Niño drought on seedling dynamics in a seasonally dry tropical forest in northern Thailand.
著     者: Prapawadee Nutiprapun, Sutheera Hermhuk, Satoshi Nanami, Akira Itoh, Mamoru Kanzaki and Dokrak Marod
掲載URL: https://www.doi.org/10.1111/gcb.16466


プレスリリース全文 (925.2KB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
教授:伊東 明(いとう あきら)
TEL06-6605-3165
E-mail:itoha[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

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