最新の研究成果

ついに実証成功! 動物の光受容タンパク質が生体の行動をコントロールする「光スイッチ」となることを発見

2022年11月25日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇2種類の光受容タンパク質によって線虫の行動を光でコントロールできることを発見
◇長年にわたる光遺伝学研究チームの最新成果

概要

生物や細胞の活動を光でコントロールできないだろうか…?
近年、この実現に近い研究方法として、「光遺伝学」と呼ばれる生命科学研究が目覚ましい発展を遂げ、注目を集めています。

大阪公立大学大学院 理学研究科の小柳 光正教授、寺北 明久教授、生活科学研究科の中台 枝里子教授らの研究グループは、2種類の光受容タンパク質によって、それぞれ線虫の行動を光でコントロールできることを明らかにしました。

本研究では、嫌いな化学物質あるいは物理的な刺激を受けると忌避行動を引き起こす線虫の感覚細胞に、ハマダラカという蚊の一種から取り出した光受容タンパク質遺伝子を導入すると、光刺激に対して忌避行動が確認できました。この忌避応答は、チャネルロドプシンに比べて感度が7,000倍以上であることが分かり、さらに、さまざまな組織で光スイッチとして使えることも明らかになりました。

また、線虫の運動ニューロンに、ヤツメウナギの脳の一部である松果体から取り出したUV受容タンパク質を発現させたところ、UV光を照射すると動きが止まり、緑色光を照射すると再び動きだすことが確認できました。この行動は、UV光照射と緑色光照射によって何度でも繰り返され、光の色で線虫の行動のオン・オフを切り替えられることが示されました。

この2種類の光受容タンパク質は、ヒトゲノム中に約800の遺伝子が存在する受容体の代わりに、光スイッチとして働くことができます。それら受容体がさまざまな生命活動に関与していることから、本研究成果により、今後、広範囲にわたり生命科学研究が進むと考えられます。

本研究成果は、20221123日「Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)」にオンライン掲載されました。



細胞内のシグナル伝達を自在に操作することは、生命科学研究における重要課題の一つでした。今回、私たちがこれまでに動物の光感覚の基礎研究によって見出した特別な光受容タンパク質を用いることで、光を使った細胞内シグナル伝達の高性能な操作に成功しました。この生物多様性の産物が、生命科学研究のブレークスルーになることを期待しています。

Itoh-sensei_press

小柳教授                 寺北教授

掲載紙情報

発表雑誌: Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)
論 文 名: High-performance optical control of GPCR signaling by bistable animal opsins MosOpn3 and LamPP in a molecular property-dependent manner
著     者: Mitsumasa Koyanagi, Baoguo Shen, Takashi Nagata, Lanfang Sun, Seiji Wada, Satomi Kamimura, Eriko Kage-Nakadai, and Akihisa Terakita
掲載URL: https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2204341119


プレスリリース全文 (630.9KB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
教授:寺北 明久(てらきた あきひさ)

      小柳 光正(こやなぎ みつまさ)
TEL06-6605-3144
E-mailterakita[at]omu.ac.jp 
           koyanagi[at]omu.ac.jp [at]
を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください