最新の研究成果

エネルギー微分を直接計算し分子構造最適化を実現 ~量子コンピュータによる化学計算の社会応用へ大きな一歩~

2022年11月30日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇量子コンピュータを活用し、有限差分法による微分値を1回の計算から直接求めるための具体的な量子論理回路を初めて明らかに。
◇今後、さまざまな分子物性の精密計算が量子コンピュータ上で可能となることを示唆。

概要

大阪公立大学大学院 理学研究科の杉﨑 研司(すぎさき けんじ)特任講師(科学技術振興機構・さきがけ専任研究者)、佐藤 和信(さとう かずのぶ)教授、工位 武治(たくい たけじ)大阪市立大学名誉教授らの研究チームは、量子コンピュータを用いて、有限差分法による微分値を1回の計算から直接求めるための量子論理回路を導出し、分子の最安定な立体構造を求める分子構造最適化へと応用しました。

有限差分法で一変数関数の微分計算を行うには、古典コンピュータでは少なくとも2回の関数値の計算が必要となります。これに対し、量子コンピュータを使えば有限差分法での微分を1回の計算から求められることが先行研究で示されていますが、微分計算を行うための具体的な量子回路は導出されていませんでした。本研究グループは、以前に開発した量子位相差推定アルゴリズムで用いる量子論理回路を改良することにより、微分計算のための量子論理回路の導出に成功しました。

本研究成果は、国際学術誌『The Journal of Physical Chemistry Letters』に20221129日(火)午後10時(日本時間)にオンライン掲載されました。



今回の成果は「量子重ね合わせ」を上手に使うことにより、原子核をどの方向に動かせばエネルギーが下がるか、すなわちエネルギーの核座標微分を量子コンピュータ上で効率的に計算できることを示すもので、量子コンピュータの化学応用に向けた大きな一歩と言えると思います。

sugisaki sensei

杉﨑 研司 特任講師

掲載紙情報

発表雑誌: The Journal of Physical Chemistry Letters
論 文 名: Quantum Algorithm for Numerical Energy Gradient Calculations at the Full Configuration Interaction Level of Theory
著     者:

Kenji Sugisaki, Hiroyuki Wakimoto, Kazuo Toyota, Kazunobu Sato, Daisuke Shiomi, and Takeji Takui

掲載URL: https://doi.org/10.1021/acs.jpclett.2c02737


プレスリリース全文 (657.6KB)

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科
特任講師:杉﨑 研司(すぎさき けんじ)
TEL06-6605-2555
E-mailsugisaki[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

または、

大阪市立大学名誉教授:工位 武治(たくい たけじ)
TEL06-6605-2605
E-mail:takui[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください

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