最新の研究成果
硫化水素が細菌の抗生物質耐性を高める仕組みを解明 -新規抗生物質開発への期待-
2022年12月13日
- プレスリリース
- 理学研究科
<要点>
○大腸菌の硫化水素センサータンパク質「YgaV」が硫化水素に応答して遺伝子の働きを調節する仕組みを解明
○YgaVの機能を欠損させると、大腸菌の抗生物質耐性が弱まることを発見
○新たな抗生物質の創薬につながると期待
<概要>
東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系のRajalakshmi Balasubramanian(ラジャラクシミ バラスブラマニアン)大学院生(博士後期課程3年)、増田真二准教授、東京大学 大学院総合文化研究科の清水隆之助教、大阪公立大学 大学院理学研究科の居原秀教授を中心とした研究グループは、今まで不明だった、硫化水素(H2S)が細菌の抗生物質耐性を高めるメカニズムを解明した。
硫化水素は細菌にとって電子源となる一方、呼吸などを阻害する有害物質でもあることから、細菌は硫化水素量を適切に感知する仕組みを持っていると考えられている。一方、硫化水素合成が細菌の抗生物質耐性に寄与することは知られていたが、その働きの詳細なメカニズムまでは解明されていなかった。
今回、硫化水素に依存した遺伝子発現を包括的に行う、大腸菌の硫化水素センサータンパク質「YgaV」を解析し、このタンパク質が嫌気呼吸に関連した遺伝子の働きを制御することを発見した。さらに、YgaVの機能を欠損させると抗生物質耐性を著しく阻害できることを明らかにした。このメカニズムの解明は、新たな抗生物質の開発につながるものと期待される。
本研究成果は11月28日に「Antioxidants」オンライン版に掲載された。
<付記>
本研究は、科学研究費助成事業の学術変革A(21H05271)、基盤研究A(18H03941)、基盤研究B(22H02236、21H02082)、基盤研究C:(22K06148)、若手研究B(21K15038)と大隅基礎科学創成財団の支援を受けて実施された。
■掲載誌情報
【発表雑誌】Antioxidants
【論文名】The sulfide-responsive SqrR/BigR homologous regulator YgaV of Escherichia coli controls expression of anaerobic respiratory genes and antibiotic tolerance
【著者】Rajalakshmi Balasubramanian, Koichi Hori, Takayuki Shimizu, Shingo Kasamatsu, Kae Okamura, Kan Tanaka, Hideshi Ihara, and Shinji Masuda
【DOI】10.3390/antiox11122359
問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
Email: koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください。
TEL: 06-6605-3411
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