最新の研究成果
糸状菌の酵素遺伝子発現機構の一端を解明 植物バイオマス実用化に必須の多種酵素の大量生産法構築に期待
2023年1月10日
- 農学研究科
- プレスリリース
- 研究
本研究のポイント
◇植物バイオマスを分解する能力に長けた酵素を生産する糸状菌の1つであるAspergillus aculeatusにおける糖質加水分解酵素生産調節機構を解析。
◇糸状菌の糖質加水分解酵素遺伝子の発現制御に、ガラクトース資化に関わる酵素であるUDP-glucose 4-epimerase(Uge5)が関与していることを明らかに。
◇糸状菌における酵素遺伝子の発現が、糖に応答して選択的に制御されている分子機構の一端を解明。
概要
大阪公立大学大学院 農学研究科 谷 修治准教授らの研究グループは、植物バイオマスを分解する能力に長けた酵素を生産する糸状菌Aspergillus aculeatusにおける糖質加水分解酵素生産調節機構を解析した結果、糸状菌の分解酵素遺伝子の発現制御に、ガラクトース資化に関わる酵素であるUDP-glucose 4-epimerase(Uge5)が関与していることを明らかにしました。さらに、糸状菌における酵素遺伝子の発現が、誘導物質である糖の種類に応答して、選択的に制御されている分子機構の一端を解明しました。
いずれ枯渇する石油の代替資源として植物バイオマスが注目されていますが、さまざまな芳香族や多糖からなる植物バイオマスを酵素分解するには、さまざまな種類の基質特異性をもつ酵素が大量に必要です。そこで酵素分解するための酵素の供給源として、糸状菌の研究が進められています。
現時点では、糸状菌において一種類の酵素を大量に生産する技術はあるものの、多種の酵素を大量生産することは困難な状況のため、本研究成果を基盤として更に研究を展開することで、多種酵素の大量生産法の開発につながると期待されます。
本研究成果は、2023年1月10日(火)に、国際学術誌「Applied Microbiology and Biotechnology」にオンライン掲載されました。
本研究では、Aspergillus aculeatusの約 9,000株の遺伝子破壊株ライブラリー を作製し、その中から糖質加水分解酵素生産を調節する新たな制御因子としてUge5を同定しました。Uge5はよく知られた酵素なので、新機能の発見に驚きました。今後も、既存の知見では説明できない現象を解明し、研究を展開したいと考えています。
谷 修治准教授
掲載誌情報
【発表雑誌】Applied Microbiology and Biotechnology
【論 文 名】A new function of a putative UDP-glucose 4-epimerase on the expression of glycoside hydrolase genes in Aspergillus aculeatus
【著 者】Mizuki Kuga, Hidetoshi Shiroyanagi, Takashi Kawaguchi, Shuji Tani
【掲載URL】https://doi.org/10.1007/s00253-022-12337-8
資金情報
本研究は、JSPS科研費(19K05777)、および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業(P07175)の支援を受けて実施されました。
問い合わせ先
【研究内容に関する問い合わせ先】
大阪公立大学 農学研究科
准教授 谷 修治
E-mail:shujitani[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
【報道に関する問い合わせ先】
大阪公立大学 広報課
担当:久保
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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