最新の研究成果
X線ビームの大きさを数学的に評価することに成功
2023年1月23日
- プレスリリース
- 工学研究科
ポイント
◇人の目では見えないX線マイクロビーム※1の、大きさ(ビーム径)を正確に評価することに成功。
◇X線ビーム径の新たな評価法を数学的な解析から導出。
◇本評価法がX線ビーム径の統一された評価法として広く使用されることが期待。
概要
大阪公立大学大学院 工学研究科の辻 幸一教授、松山 嗣史特任助教、中江 理紀大学院生(大阪市立大学 前期博士課程2年)、理学研究科の伊師 英之教授らの研究グループは、実測したX線マイクロビームの大きさ(ビーム径)の新たな評価法を数学的な解析により導き出し、この評価法が従来と比べてより正確にビーム径を算出できることを明らかにしました。
蛍光X線分析法※2を用いると、試料を壊すことなくさまざまな環境下で元素分析ができ、中でも微小領域における元素分析にはX線マイクロビームが使用されます。X線マイクロビームはビーム径が小さいほどより精度の高い元素分布像を得ることができますが、X線ビームは目で見ることはできません。そのため、実測したビーム径の評価法が必要とされていますが、従来の評価法では誤差が大きいためより正確な評価法が求められています。
本研究で見出した新たな評価法では、従来の評価法に比べてより正確にビーム径を算出することが可能です(図1)。また、現在X線ビーム径の統一された評価法は確立されていませんが、本評価法は数学的な解析に基づいて導出されたものであるため、国際基準規格(ISO)として広く使用されることが期待されます。
図1 X線ビーム径の評価値がワイヤーの径に依存する様子
本研究成果は、Wiley社が刊行する国際学術誌「X-Ray Spectrometry」のオンライン速報版に、2023年1月9日に掲載されました。
今回の研究成果によって、目に見えないX線ビームの直径を正しく評価できるようになりました。今後、この評価方法が国際標準規格として広く使われ、蛍光X線元素イメージングにおける空間分解能の評価方法が確立されることで、材料開発やバイオイメージングなど幅広い分野の発展に役立つことを期待しています。
左から中江大学院生、松山特任助教、伊師教授、辻教授
掲載誌情報
【発表雑誌】X-Ray Spectrometry
【論 文 名】Mathematical considerations for evaluating X-ray beam size in micro-XRF analysis
【著 者】Masanori Nakae, Tsugufumi Matsuyama, Hideyuki Ishi, Kouichi Tsuji
【掲載URL】http://doi.org/10.1002/xrs.3325
プレスリリース全文 (746.5KB)
資金情報
本研究は、科研費(基盤研究 B22H02108、若手研究 21K14655)、大阪市イノベーション創出事業経費2022、および大阪公立大学数学研究所:文科省共同利用・共同研究拠点「数学・理論物理の 協働・共創による新たな国際的研究・教育拠点」JPMXP0619217849により行われました。また、数学相談室を窓口とし、工学研究科物質化学生命系専攻と理学研究科数学専攻および数学研究所との共同研究として行われました。
用語解説
※1 X線マイクロビーム…マイクロオーダーの直径を有するX線ビーム。実験室では各種のX線集光素子を用いて数十μmから数μmの直径を有するX線ビームが得られている。
※2 蛍光X線分析法…試料に一次X線を照射し、試料中の各原子から発生する二次X線(蛍光X線) を測定し、そのエネルギーから元素の種類、強度から元素の存在量を解析する手法。
取材に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 工学研究科
物質化学生命系専攻 化学バイオ工学分野 物理分析化学研究室
教授 辻 幸一(つじ こういち)
TEL:06-6605-3080
E-mail:k-tsuji[at]omu.ac.jp ※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp ※[at]を@に変更してください。
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