最新の研究成果

葉が退化したラン科植物「クモラン」の根は、葉の代わりをしていた

2023年2月16日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

概要

樹上で生活するラン科植物のクモランは、葉が退化しており根だけで一生のほとんどを過ごします。クモランの根は、他の植物の葉と同様に緑色をしているため、光合成により、ある程度自活していると推測されますが、実際にどの程度光合成できるかは不明でした。

そこで大阪公立大学大学院理学研究科の小林康一准教授、神戸大学大学院理学研究科の末次健司教授(兼 神戸大学高等学術研究院卓越教授)および東京大学大学院農学生命科学研究科の田野井慶太朗教授らの研究グループは、クモランの根の光合成機能を、隣り合って生育することもある近縁種のカヤランの葉や根と比較解析しました。その結果、クモランの根は、光合成に特化しており、まさにほぼ「葉」というべき数々の性質を併せもつことが分かりました。具体的には、クモランの根はカヤランの葉に匹敵する光合成活性をもつこと、気孔は無いものの特殊な通気組織を備えること、カヤランの葉と同様に夜にCO2を取り込み、昼にそれを光合成に使うことが明らかになりました。

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つまりクモランでは、葉をもたない代わりに根が光合成に特化するように進化したと考えられます。本成果は、ランの生態と進化における新たな知見を提供するとともに、植物の多様なあり方と光合成との関係の解明に貢献するものです。

本研究成果は、2月14日に、国際誌「New Phytologist」にオンライン掲載されました。

掲載誌情報

【発表雑誌】New Phytologist
【論 文 名】Aerial roots of the leafless epiphytic orchid Taeniophyllum are specialized for performing crassulacean acid metabolism photosynthesis (葉が退化した着生ラン「クモラン」の根はCAM型光合成に特化している)
【著  者】Kenji Suetsugu, Ryohei Sugita, Akiko Yoshihara, Hidehito Okada, Kae Akita, Noriko Nagata, Keitaro Tanoi, Koichi Kobayashi
【掲載URL】https://doi.org/10.1111/nph.18812

プレスリリース全文 (1.1MB)

資金情報

本研究は、学術変革領域研究(B)「プラスチド相転換ダイナミクス」の研究課題「脂質駆動によるチラコイド膜形成過程と葉緑体分化機構の解明(研究代表者:小林康一)」および科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業さきがけ「植物分子の機能と制御」の研究課題「情報分子が拓く植物による菌根菌への寄生能力獲得と制御(研究代表者:末次健司)」による助成を受けて行われました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科生物学専攻
准教授 小林 康一
TEL:072-254-9749
E-mail:kkobayashi[at]omu.ac.jp ※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp ※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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