最新の研究成果

発光効率の向上へ! 有機ELの「再結合過程」観測に成功

2023年3月1日

  • プレスリリース
  • 理学研究科

ポイント

◇電気化学発光セル(LEC)※1の電界発光過程で生じる電子状態の変化を観測することに初めて成功
◇LECに限らず、発光素子全般に適用が可能な手法
◇発光効率を低下させる要因の早期発見に貢献

概要

スマートフォンや大型テレビで利用されている有機LED(OLED)では、有機材料の電界発光(EL)※2の特性が利用されています。発光に至る過程を精査することは、発光効率の向上に必要不可欠ですが、これまで、その過程を直接明らかにする実験手法はありませんでした。

大阪公立大学 大学院理学研究科・南部陽一郎物理学研究所の鐘本 勝一教授、保地 滉介氏(研究当時、大阪市立大学大学院理学研究科 前期博士課程大学院生)、日本化学工業株式会社(東京都江東区亀戸9-11-1)らの研究グループは、ポスト有機LEDの一つとして注目されているLECが電界発光時に時間とともに電子状態を変化させる様子を、ランプ光照射を介してその光吸収を計測することにより、直接観測することに初めて成功しました。(右図)。

本研究成果は、LECに限らず一般の有機LEDも含めた発光素子全般に適用が可能です。本手法を活用することで詳細なEL過程が明らかとなり、発光効率を低下させる要因の早期発見につながると期待されます。

figure実験の概要図

本研究成果は、国際学術誌「Nature Communications」に、2023年3月1日にオンライン掲載されました。

掲載誌情報

【発表雑誌】Nature Communications (IF = 17.69)
【論文名】Visualizing electroluminescence process in light-emitting electrochemical cells.
【著者】Kosuke Yasuji, Tomo Sakanoue, Fumihiro Yonekawa, Katsuichi Kanemoto
【掲載URL】https://www.nature.com/articles/s41467-023-36472-6

プレスリリース全文(819.5KB)

資金情報

科研費(No.17H03135)、 平成29年度大阪市立大学戦略的研究(基盤研究)

用語解説

※1 電気化学発光セル(LEC):素子内にイオンを導入し、イオンによるアシストを利用した電荷注入により高輝度なELを起こす発光素子の一つ。英語名:Light-emitting electrochemical cellから LECと総称される。
※2 電界発光(EL):素子に電圧をかけると内部に電界が生じ、その電界により光る現象。英語名:ElectroluminescenceからELと略される。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 理学研究科・南部陽一郎物理学研究所
教授:鐘本 勝一(かねもと かついち)
TEL:06-6605-2550
E-mail:kkane[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

  • SDGs09