最新の研究成果
健康・医療のデマ・誤情報の判断や情報活用に課題 大学生のヘルスリテラシーの低さが明らかに
2023年3月7日
- プレスリリース
- 研究推進機構
ポイント
◇先行調査が少ない日本の大学生に特化したヘルスリテラシー(HL)※1に関する調査を実施
◇健康・医療情報の「入手」「理解」の後の、「評価」と「活用」に自信のなさがあることが明らかに
◇生涯を通じた病気の予防・健康維持は、若年層から継続したヘルスリテラシー教育が重要であることを示唆
概要
大阪公立大学 都市健康・スポーツ研究センター 横山 久代教授らの研究グループは、2020年12月と2021年10月に、大阪市立大学または大阪府立大学に在学している学生を対象にHLと生活習慣・健康QOLの関連性を明らかにするためのWEB調査(有効回答1,049)を実施しました。調査では国際的に用いられているヘルスリテラシー評価指標を用い、健康情報の入手・活用に関する自由記述の計量テキスト分析※2も行いました。
その結果、全体の85%がHLレベルに「問題あり」、または「不十分」に該当し、国際的にみて低いレベルであることが分かりました。また、HLの各能力においては、情報を「入手」し「理解」した後の、情報の信ぴょう性「評価」や情報を「活用」した意思決定に対して課題があることも明らかになりました。一方で、健康的な生活習慣や良好な人間関係を心掛け実践していると回答した対象ほどHLレベルも高く、健康に対する自己評価が高い、という結果になりました。
HL向上は、生涯にわたる病気の予防・健康維持に重要であり高齢化社会における医療問題等の観点でも注目されています。日本人のHL向上にむけて、若年層から継続した教育機会の創出やプログラム開発が重要であることも示唆されました。
本研究成果は、国際学術誌「Healthcare」に2023年2月27日にオンライン掲載されました。
用語解説
※1 ヘルスリテラシー(HL):健康や医療に関する情報を入手し、理解し、評価し、活用するための知識や意欲、能力のこと。また、それによ
って健康に関する意思決定や問題解決ができること。
※2 計量テキスト分析:文章・テキストデータに含まれる語の品詞や出現頻度などを計量的に分析する手法。
<研究者からのコメント>
インターネット上に溢れる健康情報の中から、科学に裏付けされた信頼できる情報を選び取り、最適な意思決定をするために身につけておかねばならないヘルスリテラシー。今回、対象となった学生のヘルスリテラシーは、他国の大学生と比較しても低いことがわかりました。我が国ではヘルスリテラシーの獲得が標準的な教育カリキュラムに位置づけられていません。結果を受け、現在は健康情報を評価、活用する能力を高めるための実践的な取組みを始めたところです。学生の生涯にわたる健康づくりにコミットしたいと思っています。
横山 久代 教授
掲載紙情報
発表雑誌: | Healthcare |
論 文 名: | Health Literacy among Japanese College Students: Association with Healthy Lifestyle and Subjective Health Status |
著 者: | Hisayo Yokoyama, Daiki Imai, Yuta Suzuki, Akira Ogita, Hitoshi Watanabe, Haruka Kawabata, Takaaki Miyake, Izumi Yoshii, Shinji Tsubouchi, Yoshimasa Matsuura, Kazunobu Okazaki |
掲載URL: | https://doi.org/10.3390/healthcare11050704 |
研究内容に関する問い合わせ先
都市健康・スポーツ研究センター
教授: 横山 久代(よこやま ひさよ)
TEL:06-6605-2947
E-mail:yokoyama_hisayo[at]omu.ac.jp [at]を@に変更してください
報道に関する問い合わせ先
広報課 担当:田中
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp [at]を@に変更してください
該当するSDGs